コラム

醜悪なミニ政党こそ民主主義の危機

2022年07月19日(火)16時15分
周 来友(しゅう・らいゆう)
参院選

YOSHIO TSUNODA/AFLO

<参院選では一部のミニ政党、小規模野党が善戦した。私が取材した限りでは、奇抜なこれらの政党には問題のある人物が多い。政界で力を持つことはないだろうと、無視していていいのだろうか>

猛暑日が続いている。その暑さに釣られたのか、先日の参議院選挙は予想外に熱かった。

自民党が圧勝したが、それには安倍晋三元首相が銃撃され亡くなったことも関係していそうだ。自民党に同情票が集まったという分析もあった。安倍氏の急逝で政治と宗教の関係も注目されることになったが、今後はその闇も次第に明るみに出るだろう。

私は一介の外国人だ。日本の政治に関わってくれるなと言われることもあるし、そのつもりもない。しかしやじ馬根性は捨て切れず、今回の選挙には関心を寄せていた。

特に注目していたのは、議席獲得の見込みが薄く、所属議員がごくわずか、もしくは1人もいない「ミニ政党」だ。

比例代表選では計15の政党が届けを出していたが、その中には名前すらほとんど知られていないミニ政党もあった。選挙区のほうでは、もっとワケの分からない党名がいくつも並んでいた。わざわざここでその党名を書く気にもならない。

私は約半年前から、自分のYouTubeチャンネル「地球ジャーナル ゆあチャン」でミニ政党や小規模野党の党首らを取材してきた。

NHK党の立花孝志党首、日本第一党の桜井誠党首、国民主権党の平塚正幸党首(同党は参院選不参加)、ごぼうの党の奥野卓志代表、れいわ新選組の山本太郎代表といった面々だ。

テレビに出て発言するたび「中国は一党独裁だ」などと言われるので、日本の政党政治をもっと理解しようと闘志を燃やしてのことだ。

そこで分かったのは、奇抜な党名や突拍子もない主張を掲げるこれらの政党には、目立ちたがりの人物が多いこと。それもまた民主主義の一面なのだろうが、問題は(私の知る限り)金儲けのために政治を利用する者や、品行方正からは程遠い者が多いことだ。

選挙公報に「1票につき約250円」と書き、政党助成金のために票を入れてくれと訴えたNHK党。私が得た情報によると、同党幹事長は億単位の借金を踏み倒し、金を貸した人の気持ちも考えずに、自己破産した過去を開き直って語っていた。ところが同党は1議席を獲得し、まさかの「大勝利」。

日本第一党は党首がかつて嫌韓デモを主催していた過去を巧みに隠し、もっともらしい保守政策を掲げ、国民主権党は「コロナは風邪」の陰謀論で名を売り、支持者とのスキャンダルを週刊誌に報じられた人間が党首を務めている。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ペロシ元下院議長の夫襲撃、被告に禁錮30年

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅安、FRBは利下げ時期巡り慎

ワールド

バイデン氏のガザ危機対応、民主党有権者の約半数が「

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story