コラム

日本の雑誌は私の「教材」だった──北京でグラビアを知り、池袋で配送アルバイトをし、今も週刊誌を愛読中

2021年12月27日(月)17時10分
周 来友(しゅう・らいゆう)

仕事仲間は大学生や専門学校生、フリーターなど日本人が中心で、日本語の会話力向上に大いに役立った。それでも、読み書きの面では雑誌に助けられたところが大きい。

大学卒業後、私は東京大学と東京学芸大学の両大学院で日本文学を研究したが、その時も、日本語学校や大学で身に付けたのは日本語の基礎であり、語彙や表現を豊かにしてくれたのは雑誌だったのだと実感した。

外国人が日本人らしい話し方をマスターするのは容易ではないが、読み書きは努力次第。さまざまな表現が使われる雑誌は、まさにその最適な教材なのだ。

ただ残念なことに、雑誌業界は近年、先細り傾向にある。駅から雑誌を売る売店が消え、コンビニの雑誌コーナーすら縮小されている。日本の雑誌にお世話になってきた外国人としては寂しい限りだ。

私は今も、文春や新潮、SPA!といった週刊誌(もちろん、ニューズウィーク日本版も)をよく読むが、それは単に面白いから、情報収集のため、だけではない。

雑誌の記事は、ほとんどがきちんとした取材や調査に基づいた信頼に足る内容で、文章はこなれていて、校正もされている。内容はおろか、日本語すら怪しいネットニュースとは一線を画すものだ。また、中国と異なり、雑誌によって主義主張が異なるのもいい。日本人にとっても、知識と表現力を磨く優れた教材と言えるだろう。

衰退が叫ばれる日本の雑誌だが、まだまだ存在意義は大きいように思う。ネット情報との差別化を図りつつ、生き残りを図ってもらいたいと願うのは、何もノスタルジックな気分からだけではない。

Zhou_Profile.jpg周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院修了。通訳・翻訳の派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレント、YouTuber(番組名「ゆあチャン」)としても活動。


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