最新記事
イラン

イラン公館空爆で革命防衛隊の最強司令官が死亡、イスラエルの仕業ならヒズボラとの全面戦争に発展も

Israel Escalates Shadow War Against Iran

2024年4月2日(火)18時24分
ロビン・グラマー(フォーリン・ポリシー誌記者)

イランからすれば、彼らは今回の攻撃で重要な司令官を、しかも「主権区域」への攻撃によって失ったことになる(イランやその代理勢力も他国の外交関連施設に攻撃を行ったことはあるが)。

リスターは「今後イランが強硬な対応を取ることは間違いないだろう」と述べた。

今回の攻撃は、既にイスラエルとハマスの戦争で混乱している中東地域をさらに揺るがすニュースだ。イラクのフアド・フセイン外相は3月に米ワシントンを訪問した際に、「中東地域は砲火に見舞われており、全てのことがガザで起きている戦闘と密接に関係している」と述べ、「きわめて危険な状態だ」との見方を示していた。

 

イラン政府は今回の攻撃を受けてすぐ、攻撃はイスラエルによるものだと非難し報復を誓ったが、意外なことに、報復がどのようなものになるのかについては触れなかった。イラン外務省のナセル・カナニ報道官は声明で、イランには「今回の攻撃への対応を実行する権利があり、今後、侵略者に対してどのような対応をするかを決定する」と述べた。

米軍関連施設攻撃の可能性も

過去の例から考えられる「対応」には、直接的なものと間接的なものがある。直接的な対応には、イスラエルに対するミサイル攻撃など、イスラエルとイランをより直接戦争に近づける行動がある。より間接的な対応には、イラク国内にあるイスラエル情報機関関連の標的に対する攻撃や、イランの代理勢力によるイスラエルへのより大規模な、あるいはより頻繁な攻撃などが含まれる。

もう一つ懸念されるのは、イランがシリアとイラクの代理勢力に対して、両国にある米軍やその関連資産への攻撃を再開するよう促すことだ。2月上旬にアメリカがシリアとイラクで活動するイラン代理勢力を標的とした空爆を行って以降、そのような攻撃は減っていたが、また新たに始まる可能性もあるとリスターは警告する。「これまでもそうだが、イスラエルによる攻撃の激化に対するイランの反応が、イスラエルに対する攻撃とは限らない。アメリカを攻撃するケースもある」と彼は述べ、さらにこう続けた。「イランから見れば、イスラエルもアメリカも同じなのだ」

最悪のシナリオは、イランによる報復がイスラエルと(イランの最も強力な代理民兵組織である)ヒズボラの全面戦争に発展することだ。

これまで米ジョー・バイデン政権の特使などが、レバノン南部の国境沿いでのイスラエルとヒズボラの緊張緩和を試みてきたが、いずれも失敗に終わっており、イスラエルとレバノンの国境地帯は一触即発の状況となっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、9月米利下げ観測強まる

ビジネス

米GDP、第2四半期改定値3.3%増に上方修正 個

ワールド

EU、米工業製品への関税撤廃を提案 自動車関税引き

ワールド

トランプ氏「不満」、ロ軍によるキーウ攻撃=報道官
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「風力発電」能力が高い国はどこ…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中