最新記事
寄稿

日本人にも喜ばれる訪日客向けの観光施策とは? 東京を魅力的な旅行先にするためにできること(デービッド・アトキンソン)

2023年7月24日(月)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載
浅草寺

浅草の浅草寺は訪日外国人観光客に大人気のスポットだが、東京は寺院のみならず、もっと多様な顔や魅力を持つ街だ bhidethescene-iStock

<株式会社小西美術工藝社の代表取締役社長で『新・観光立国論』など多くの著書があるデービッド・アトキンソン氏。2020年からは日本政府の成長戦略会議の一員として、日本の観光政策についても助言し続けている氏が、観光地としての東京について語る>

東京は、1000万を超える人々の暮らしや仕事を支える巨大メトロポリスであると同時に、訪日外国人にとって、驚くほど多様な魅力を持つ街だ。

たとえば、食。日本の中心だから、高級懐石や寿司から下町の食堂まで、ありとあらゆる和食に舌鼓を打てるのはもちろんのこと、世界各国の料理を楽しむことができる。それもイタリア料理やフランス料理だけでなく、ギリシャ、南米、インド、タイ、中国、韓国など、文字通り世界中の料理店があるのだ。そこで供される料理の多くは、日本人の味覚に合うようにアレンジされているため、オリジナルとはまた異なる面白さがあるだろう。東京には数え切れないほどクールなバーもある。

tokyoupdates2307_2.jpg

銀座の歌舞伎座のまわりにはモダンなビルが立ち並ぶ。2013年に老朽化のため建て替えられた歌舞伎座は、元の伝統的なデザインを踏襲したものとなっている 7maru-iStock

東京で劇場といえば、伝統的な歌舞伎や能楽の劇場だけではない。現代演劇やオペラ、オーケストラのコンサートを楽しめるホールも多い。

また、伝統的な木造建築の隣に超モダンなビルが建っているかと思えば、19~20世紀初めに建てられた和洋折衷の建物も数多くも残っている。

買い物にしても、陶磁器や刃物、着物、骨董品をはじめとする伝統工芸品もあれば、日用品の買い物も楽しい。また、高級ブランドショップは、世界でも有数の品揃えを誇る。

もちろん、アニメやマンガ、オタクグッズなど、世界に名を馳せるユニークでニッチな文化もある。

重要なのは、高尚な文化や名建造物と同じくらい、日常生活にも素晴らしい魅力が詰まっているということだ。

東京のオリジナリティと多様性が、東京の魅力となる

東京には、イメージするようないわゆる大都市とは異なる顔もある。最南端は東京の中心地から1,000キロも離れた小笠原諸島だし、西部には登山を楽しめる山々や手つかずの自然が広がる。

この多様性は観光客にとって素晴らしい宝になっている。なにしろコロナ禍前の2019年には、世界規模では15億人もの人が国外旅行へと出かけていたのだ。どんな都市であれ、一面的な魅力では彼らの旺盛な好奇心はとても満たすことができない。

東京がその多様性を活かすカギは、本来の形を大切にしつつ、外国人観光客が親しみやすい仕組みを作ることだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ロは「張り子の虎」に反発 欧州が挑発な

ワールド

プーチン氏「原発周辺への攻撃」を非難、ウクライナ原

ワールド

西側との対立、冷戦でなく「激しい」戦い ロシア外務

ワールド

スウェーデン首相、ウクライナ大統領と戦闘機供与巡り
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中