最新記事

ウクライナ戦争

ロシア軍のあまりの無能さは「驚き」であり「謎」...米専門家が語る戦争の現状と教訓

LESSONS FROM THE WAR

2023年1月28日(土)10時23分
ラビ・アグラワル(フォーリン・ポリシー誌編集長)
ウクライナに放置されたロシア軍の戦車

ウクライナ北東部の路上に放置されたロシア軍の戦車の残骸(昨年3月) PRESS SERVICE OF THE UKRAINIAN GROUND FORCESーREUTERS

<予想を覆す苦戦を強いられるロシア、台湾情勢への影響──米専門家2人に聞くウクライナ戦争の教訓>

「将軍は常に過去の戦争を戦う」という格言がある。だが目を向けるべきは、これからの在り方だ。ウクライナ戦争は、世界秩序をどんな形で再編成しているのか──。

イラク・アフガニスタン駐留米軍司令官を務めたデービッド・ペトレアス元CIA長官と、ニューアメリカ財団CEOで元米国務省政策企画本部長のアンマリー・スローターに、フォーリン・ポリシー誌のラビ・アグラワル編集長が話を聞いた。

◇ ◇ ◇


――アメリカ史上、最長レベルの戦争で軍事戦略を指揮した将軍として、ウクライナ戦争に意外な点はあるか。

ペトレアス 意外だったことは多い。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、これほど(第2次大戦当時の英首相ウィンストン・)チャーチル的な人物であるのには感心し、少しばかり驚いた。

戦略的リーダーは目的を正しく把握し、効果的に伝え、その遂行を監督し、どう改善するかを決定しなければならない。さらに、このプロセスを繰り返す必要がある。(ゼレンスキーは)見事にそれを実行している。一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はもちろん、そうではない。完全に失敗している。

ロシア軍の無能さには本当に驚かされた。欠陥があるのは分かっていたが、(ウクライナ侵攻前の)演習期間に何もしていなかったらしいという事実は意外だった。

普通なら、ただ戦車を送り込むようなことはしない。戦車の前方に歩兵隊を配置し、対戦車ミサイルの攻撃を防ぐ。迫撃砲などで援護し、防空体制を敷き、電子戦で相手の通信を妨害する。進軍中に障害物や爆発物に遭遇する可能性に備えて、工兵隊や爆発物処理隊も派遣する。だがロシア軍は絶望的なほどお粗末だ。

対ウクライナ国境地帯での演習期間に何をしていたのか、謎だ。私だったら、研ぎ澄まされた状態で侵攻に臨めるよう、訓練していただろう。

それだけではない。作戦計画が極めて不適切だった。指揮統制が構造的に混乱していて、現代化も衝撃的なまでに進んでいなかった。ロシア軍の作戦行動は、予測していたよりひどい。準備期間があれほどあったことを考えると、本当に驚きだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日仏、円滑化協定締結に向けた協議開始で合意 パリで

ワールド

NATO、加盟国へのロシアのハイブリッド攻撃を「深

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比1.6%増 予想と一

ワールド

暴力的な抗議は容認されず、バイデン氏 米大学の反戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中