最新記事

ロシア

プーチン、教育・医療費削って国防・治安予算を増額へ 「愛国教育」は513%増

2022年11月28日(月)15時21分
戦車に乗るロシア軍の兵士

ロイターの予算分析によると、ロシアは来年度予算の3分の1近くを国防と国内治安関連に費やす予定だ。ウクライナにおける軍事作戦の維持に資金を回すため、学校や病院、道路に割り当てられる予算は削減される。写真は5月にモスクワで行われた戦勝記念日の軍事パレードで撮影(2022年 ロイター/Evgenia Novozhenina)

ロシアは来年度予算の3分の1近くを国防と国内治安関連に費やす予定だ。ウクライナにおける軍事作戦の維持に資金を回すため、学校や病院、道路に割り当てられる予算は削減される。

ロイターの予算分析によると、ロシア政府は国防・治安関連に合計9兆4000億ルーブル(約21兆5000億円)を支出することになる。来年は2024年大統領選挙におけるプーチン氏の再選につながる重要な年だが、他の優先課題は圧迫される形だ。

ロシア連邦捜査委員会、検察庁、刑務所、ウクライナに派遣されている国家警備隊の活動を含む治安関連予算だけでも、2022年に比べて50%増加する。

ロシア政府としては記録的な規模の国防・治安関連予算になるが、金額自体は、米国の来年度国防予算および国土安全保障のニーズの一部(すべてではない)を満たすための予算に比べれば、約18%にすぎない。

独立系のアナリストであるアレクサンドラ・ススリナ氏は、「国家予算が軍事作戦の資金を捻出する手段になっている」と語る。「年金や教育関連の予算も増額されているとはいえ、ロシアが本来やるべきことに比べれば見劣りがする。10年来の問題が未解決のままだというのに」

ロシア財務省にコメントを要請したが、回答は得られなかった。

国内治安予算を5割増へ

予算編成の変化には、対ウクライナ軍事作戦のてこ入れというロシアの思惑が透けて見える。ウクライナでは、部分的に占領した4州の併合を宣言したにもかかわらず、9月以降は大幅な後退を強いられている。プーチン大統領はロシア連邦政府と国内80以上の連邦構成主体に対し、軍のニーズを支えるべく、これまで以上に効率的に協力するよう指示した。

表面的には、来年度の国防予算は4兆9800億ルーブルで、前年比わずか1%増となる。だがそれは単に、2月のウクライナ侵攻以降に、今年度の国防予算が当初の3兆5000億ルーブルから3分の1も増額されているからだ。

対照的に、国内治安関連予算は前年比50.1%増の4兆4200億ルーブルとなる見込みだ。

プーチン大統領は、対ロシア制裁は西側諸国にブーメランのように打撃を与えていると主張してきた。西側諸国ではエネルギーと食料のコストが急上昇し、ここ数十年で最悪のインフレへの対応に苦慮している。とはいえ、ロシアの経済も無傷ではない。

西側諸国による制裁と、30万人の予備役を招集する政府の決定を反映して、ロシアの第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比4%減少した。また、何十万人もの国民が徴兵を逃れるために国外に流出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中