最新記事

中国経済

中国は「GDPアメリカ超え」を諦め、ゼロコロナを突き進む

XI MISSES THE MARK

2022年11月23日(水)11時40分
ジョン・フェン(本誌記者)

221129p18_CKZ_02.jpg

防護服姿で党大会開催を祝うメッセージを掲げる医療関係者 CFOTO-FUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES

一方で中国国家統計局は、10月17日に予定されていた主要な経済指標(第3四半期のGDPを含む)の発表を延期した。理由は示されなかった。

この動きは各国のエコノミストや投資家を驚かせた。こうした数字が定期的に、包み隠さず発表されなければ、世界第2位の経済大国に対する信頼は失われてしまう。

また党大会初日の2時間近い報告で、習は「経済」という単語を22回しか使わなかった。彼が党総書記に選ばれた10年前の第18回党大会では102回だった。

10年前には24回登場した「市場」も、今回はわずか3回。逆に「安全保障」は36回から50回に増えた。

従来並みの経済成長率であれば、いわゆる「2035年目標」は達成可能と予測できた。

しかし、今の中国はもっと差し迫った政策決定を迫られている――そう指摘するのは、米ブルッキングス研究所の客員研究員で政治学者のフィリップ・シューだ。

「今の中国経済はいい状態にはなく、少なくとも来年後半まではこの状態が続きそうだ。2035年までにGDPを2倍にするという目標が今回の報告で言及されなかったのは、これが主な理由だと思う」

国立台湾大学の教授で同大学の中国研究センターの所長でもあるシューは「第3四半期のデータは誇るに足りないので、晴れの党大会に泥を塗るのを避けるために発表を遅らせたということだろう」と分析する。

さらにシューは「成長減速の主因は不動産部門の構造的な問題にあり、これが十分に解決されない限り、以前のような成長率に戻ることは難しい。それくらいは習も理解している」と言う。

「確かにゼロコロナ政策もブレーキになっているが、減速の主因ではない。ゼロコロナ政策のせいで消費と投資が冷え込んだのは事実だが、現在の規制が緩和されれば、そう無理なく回復するはずだ」

「しかし習は党大会で、今後もゼロコロナ政策を続けると言った。この点は軽視できない。今までも地方政府は、不動産部門を下支えするために相当な資金を注入してきたが、状況はあまり改善されず、中国のほぼ全域で地方政府の債務が急増している。こんなことをいつまで続けられるのか、大いに疑問だ」

遠ざかるハイテク立国の夢

外的な要因もある。米商務省が10月7日に発表した対中輸出規制の強化だ。先端的な半導体を製造するアメリカ製の製造装置を中国企業が入手できないようにする措置が含まれている。これに対する政策的な対応を、中国はまだ打ち出せずにいる。

ジョー・バイデン米大統領の国家安全保障担当補佐官であるジェイク・サリバンは、この規制強化の背景には「国家安全保障上の明らかな懸念」があると述べた。10月13日にはジョージタウン大学で行った講演で、「こうした技術は大量破壊兵器や極超音速ミサイル、無人機、監視カメラを含む高度な軍事システムの開発と配備に使用される」と語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英建設PMI、4月は約1年ぶり高水準 住宅部門は不

ビジネス

円安、政策運営上十分に注視していくこと確認した=首

ワールド

イスラエル軍、ラファ検問所のガザ側掌握と発表 支援

ビジネス

アングル:テスラ、戦略転換で幹部続々解雇 マスク氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中