最新記事

米中関係

習近平もバイデンも「さすが」ベテランだった...初会談にあった現実的な成果

Kind of a Big Deal

2021年11月23日(火)15時53分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

「たったそれだけ?」と思うかもしれない。だが、現在の米中関係には、違いを管理する場所も手順もない。それを構築する必要性を確認できたことは、将来、戦争か平和かを左右する重要な第一歩だ。

「古い友人」と呼んだ意味

上院議員時代から上院外交委員長を務めるなど、長年アメリカの外交に深く関わってきたバイデンは、人間関係に大きな(ともすれば行きすぎた)重点を置いてきた。習とも、バイデンがオバマ政権の副大統領で、習が中国共産党のトップ候補だった時代から対面や電話で話をしてきた。

習が15日のオンライン会談で、バイデンを「老朋友(古い友人)」と呼んだのは、こうした関係を認識していることを、ホワイトハウスだけでなく、自らが率いる中国共産党にも示唆したものだった。

「両首脳とも崖っぷちから後退したがっていることを示すサインが多く見られた」と、スタンフォード大学のダニエル・スナイダー(東アジア研究)は語る。

「どちらも自国内に深刻な政治的・経済的問題を抱えている。そしてどちらも、米中対立を利用して、こうした問題から国民の目をそらしてきた。同時に、この対立が本物の衝突に発展する危険性を認識している。そんなことになれば、どちらの問題も悪化する」

サリバンも会見で、「意思疎通不足や見込み違い」から戦争が起きる危険性に何度か言及した。また、国内政策と外交政策は結び付いているという、バイデンとサリバンの持論を改めて指摘した。

バイデンは過去の選挙で、「中間層のための外交政策」を唱えたことがある。例えば、アメリカの労働者や産業を不利な状況に置かない通商政策を実行するというのだ。最近署名にこぎ着けた1兆ドル規模のインフラ投資法案も、中国との競争に勝利するために必要だと訴えてきた。

そのポイントは2つあった。まず、中国製品への依存度を下げて、アメリカの繁栄を下支えすること。また、権威主義的な中国のほうが「仕事が速い」という最近流布するイメージに対抗して、民主主義国も「仕事ができる」ことを世界にアピールすることだ。

インフラ投資法案が成立した今、バイデンはライバル関係をそれほど強調しない形での対中政策へのシフトに前向きになっているのかもしれない。もちろん、米中の国益の一致と不一致を十分に理解した上で。

バイデン・習会談は、派手な成功ではなかっただろう。だが、新たな米中関係の起点になるかもしれない。

©2021 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏18日訪朝、24年ぶり 安保パートナーシ

ワールド

再送ロシア、NATO核配備巡る発言批判 「緊張拡大

ワールド

中国のEU産豚肉調査、欧州委「懸念せず」 スペイン

ビジネス

米バークシャー、中国BYD株を再び売却 3980万
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サウジの矜持
特集:サウジの矜持
2024年6月25日号(6/18発売)

脱石油を目指す中東の雄サウジアラビア。米中ロを手玉に取る王国が描く「次の世界」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 2

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    中国「浮かぶ原子炉」が南シナ海で波紋を呼ぶ...中国…

  • 5

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 6

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 7

    中国経済がはまる「日本型デフレ」の泥沼...消費心理…

  • 8

    ジョージアはロシアに飲み込まれるのか

  • 9

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 10

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 7

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中