最新記事

YouTube

親に利用され、ネットでは批判の的になる「未成年YouTuber」たち

When Parents Overshare

2021年11月5日(金)18時07分
ダニヤ・ハジャジ
わが子の動画

親が投稿したわが子の姿は長期間、誰でも見られるコンテンツになる MASKOT/GETTY IMAGES

<親が投稿するわが子の動画は広告収入を稼げる鉄板コンテンツだが、子供が将来にわたって被る被害は甚大だ>

9月8日、53万8000人の登録者を誇る子育てユーチューバーのジョーダン・シャイアンは、動画で愛犬のロージーについて報告した。ロージーは、犬パルボウイルス感染症と診断を受けたばかりだった。これは、命取りになることも多い手ごわい病気だ。

その場にいる8歳の息子が泣いていた。シャイアンも涙をこらえて語り掛けた。「ロージーはきっと乗り越えられると思います......どうか私たちのために祈ってください」

ここで終わりのつもりだったのだろう。しかし、おそらく編集ミスにより、投稿された動画にはこの後のやりとりも映っていた。動画のサムネイル用写真を撮るために、もっと悲しそうな顔をするようにと、シャイアンが息子に指導する場面だ。「泣いている演技をして」と、シャイアンは息子に指示していた。

この動画には批判が殺到した。シャイアンは殺害予告を受け、息子にも嫌がらせのメッセージが届いた。

シャイアンはすぐに動画を削除し、繰り返し謝罪。今後は息子を動画に登場させないと約束した(シャイアンは本誌の取材に応じていない)。

収入トップは9歳のライアン・カジ

親がわが子を披露する画像や動画は、ソーシャルメディアの定番コンテンツだ。世論調査会社ピュー・リサーチセンターが2019年に発表した調査結果によると、13歳未満と思われる子供が出てくる動画は、ほかの動画の3倍の再生回数を記録するという。

「ライアンズ・ワールド」というYouTubeチャンネルで大人気のライアン・カジはまだ9歳。しかし、フォーブス誌によれば、20年のユーチューバー収入ランキングで3年連続のトップを守り、推定で2950万ドル稼いだ。

親が子供の動画や情報をオンラインでシェアする「シェアレンティング」──「シェア(共有)」と「ペアレンティング(子育て)」を組み合わせた造語──は、一大ビジネスになっている。インフルエンサー親子が何百万人ものフォロワーを獲得し、高額のスポンサー収入を得るケースも少なくない。

動画で商品を紹介して報酬を受け取る人もいれば、視聴者にオリジナル商品を販売して儲ける人もいる。最も多いのは、グーグルの広告プログラムを通じて広告収入を得るパターンだ(YouTubeはグーグルの傘下)。

しかし、そのようなコンテンツに登場する子供たちには深刻な危険が及ぶ恐れがある。ツイッターやウェブサイトのコメント欄を見れば、インターネットの世界の醜悪さがよく分かる。それなのに、YouTubeなどのメディアも法律も、子供たちのプライバシーと安全を守るために有効な手段を設けていない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中