最新記事

日本社会

家族のケアで勉強する時間もない「ヤングケアラー」の中高生は全国で4万5000人

2021年6月2日(水)11時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
日本の中学生

家族のケアで勉学に支障が出るような事態は許されない Milatas/iStock.

<自分をヤングケアラーと自覚せず、他人に相談するほどではないと思い込んでいる生徒が多い>

最近、ヤングケアラーが注目を集めている。幼き介護者のことで、家族の世話をしている子どものことをいう。病気の親・祖父母の介護をしている子、幼い弟妹の世話をしている子などがイメージされる。数としては後者が多いだろう。

昔は、こういう子どもはたくさんいた。生産力が低い時代では子どもも立派な労働力で、下の兄弟の世話を大人同様に任されていた。明治時代の初期、子どもを学校にとられてはたまらないと、各地で「学校焼き討ち」が起きていたのはよく知られている。

だが現在では、子どもが教育を受ける権利は法律で規定され、その妨げとなる児童労働は制約されるようになっている。家族のケアも同じだ。人間形成に寄与する面があるとはいえ、勉学に支障が出るような事態は許されない。

今年3月にヤングケアラーの初の実態調査の結果が公表された。国が三菱UFJの研究所に委託した調査で、全国の中学校2年生(5558人)の回答を分析したところ、以下の数値が出たと報告されている。

・世話をしている家族がいる......5.7%
・このうち、宿題や勉強をする時間がない......16.0%

いずれもメディアで大々的に報じられた。この2つを使って、調査対象となった中学校2年生の組成を描くと<図1>のようになる。

data210602-chart01.png

横軸は、世話をしている家族がいるかどうかだ。いる生徒は5.7%で、右側の群が該当する。このグループのうち、宿題や勉強の時間もないという生徒は16.0%で、縦軸の比重でこれを表す。

世話をする家族がいるヤングケアラーで、かつ勉強の時間もとれないという生徒は、<図1>の赤色のゾーンということになる。全数ベースの比率は、5.7%と16.0%をかけ合わせて0.91%ということになる。110人に1人だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、総裁「状況は正しい方向」 利

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな

ワールド

英世論調査、労働党リード拡大 地方選惨敗の与党に3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中