最新記事

五輪ボイコット

IOCは罪深い北京五輪を中止せよ──新疆や香港での人権抑圧を追認するな、と人権団体

Activist Says Boycott of Beijing Olympics Only Way Forward: 'Time For Talking With the IOC Is Over'

2021年5月18日(火)15時56分
レベッカ・クラッパー

北京五輪のボイコットを求める声明は、米議会で公聴会が開かれる前日の17日に発表された。米議会では18日に、北京五輪と中国の人権問題に関する合同公聴会が開かれる予定だ。また米国オリンピック・パラリンピック委員会は3月に、ボイコットをしても効果はなく、アスリートたちを傷つけるだけだと述べていた。

IOCは繰り返し、自分たちは政治に関与せず、「中立の立場」を維持しなければならないのだと主張してきた。スイスに拠点を置くIOCは、本質的にはスポーツ事業の運営組織であり、収入の約75%をテレビ放映権料から、さらに18%をスポンサー企業から得ている。IOCは、国連での発言権も持つ。

IOCのトーマス・バッハ会長は3月、中国の人権問題に関連して「我々は超世界政府ではない」と述べ、IOCとしての対応には限界があると述べた。

板挟みになるアスリートたち

中国外務省は北京五輪のボイコット論が浮上していることについて「スポーツの政治利用」だと批判し、ボイコットは「失敗する運命にある」と述べている。中国政府は、中国がウイグル人に対するジェノサイド(集団虐殺)を行っているとする訴えを否定している。

米国務省は3月に発表した報告書に、中国で過去1年間、新疆ウイグル自治区に暮らすウイグル人をはじめとする複数の少数民族に対して「ジェノサイドや人道に対する罪」が行われてきたと明記した。

テトンは、一部のアスリートが北京五輪のボイコットに反対している可能性があることは知っている。だがブラック・ライブズ・マター(黒人の命を軽んじるな)運動で勢いを得たそのほかの人々からは、ボイコットに賛同を得られると考えており、今こそ「真剣勝負」の時だと述べた。

「アスリートたちのことや、彼らが生涯をかけてやってきたことについて懸念を抱いている人が大勢いるのは確かだ」と彼女は述べ、こう続けた。「だが彼らをこのような苦境に立たせたのはIOCであり、責任を負うべきはIOCだ」

スキー競技で冬季五輪2回の金メダルを獲得しているアメリカのミカエラ・シフリンは、3月のCNNとのインタビューで、アスリートとしてのジレンマを語っていた。

「誰だって、人権やモラルと自分の仕事ができるかどうかのどちらかを選ばなければならないような立場には置かれたくない」と彼女は述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中