最新記事

日本政治

後手に回った緊急事態宣言 効果なければ「ポスト菅」の引き金に

2021年1月5日(火)17時04分

菅義偉首相が検討を決めた対緊急事態宣言の再発出は、世論の目には小池百合子・東京都知事らに押し切られた形に映り、総選挙の時期が迫る与党内から不満の声が聞こえる。写真は緊急事態宣言の再発出の検討を表明したあと、記者会見場を出る菅首相(中央)。4日、東京で撮影。(2021年 ロイター/Yoshikazu Tsuno)

菅義偉首相が検討を決めた対緊急事態宣言の再発出は、世論の目には小池百合子・東京都知事らに押し切られた形に映り、総選挙の時期が迫る与党内から不満の声が聞こえる。首都圏1都3県の飲食店に的を絞ったこのやり方で効果が出なければ、支持率はさらに下がり、ポスト菅をめぐる政局の引き金になるとの見方が出ている。

4知事連名という構図

「昨年末の時点で菅さんが先手を打った方が良かった」。自民党のある幹部は5日、ロイターの取材にこう答えた。

昨年12月25日のクリスマスに開いた記者会見、菅首相は緊急事態宣言の発出には消極的な姿勢を示していた。事態が動きはじめたのは6日後の大晦日。東京都の新規感染者が初めて1000人を超え、首相は急きょ関係閣僚と対応を協議した。年明け1月2日には東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の4知事が揃って西村康稔経済再生相と会談し、3時間以上にわたって緊急事態宣言の発出を迫った。そして4日、菅首相は宣言発出の検討に入ると表明した。

菅首相が緊急事態宣言に後ろ向きだったのは、ようやく持ち直してきた経済への打撃を懸念したためだ。安倍晋三政権下で出した昨春の緊急事態宣言後、4─6月の国内総生産(GDP)は戦後最大の落ち込みを記録した。「コロナ対策が後手に回っているとの批判から、首相の年頭会見で緊急事態宣言の検討を表明せざるを得ない流れになった」と、事情を知る政府関係者は言う。

政府・与党関係者が特に気にかけているのが、1都3県の知事が一致団結して菅政権に対策を迫ってきた構図だ。「小池知事1人で緊急事態宣言を要請しただけならば、小池氏のパフォーマンスで終わった」と、前出の自民党幹部は指摘する。「4知事連名で要請し、小池さんに菅さんが押された格好だ」と、同幹部は語る。

「1都3県に出すの遅いでしょ、出すの遅すぎてその他の県にも多分蔓(まん)延してる」、「遅きに失した感は否めないが、これは経済へのダメージを少しでも避けたい菅総理と医療現場の崩壊を防ぎたい知事との攻防」──4日の年頭会見後、短文投稿サイトツイッターには菅首相が緊急事態宣言の検討を表明したことを巡ってユーザーの投稿が相次いだ。

4知事は独自の対策として、住民に対して午後8時以降の外出自粛も呼びかけることを決めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州の銀行、国境を越えた合併は可能性低い=仏ソジェ

ビジネス

米下院、暗号資産法案を超党派で可決 SECは金融リ

ビジネス

韓国中銀、金利3.50%に据え置き 成長率予想を上

ワールド

中国軍、台湾周辺で軍事演習開始 新総統の就任後
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結果を発表

  • 2

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき

  • 3

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の大群、キャンパーが撮影した「トラウマ映像」にネット戦慄

  • 4

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 5

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    魔法の薬の「実験体」にされた子供たち...今も解決し…

  • 9

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中