最新記事

中国

コロナ対応医療関係者への給料3倍:中国は2003年から法制化

2020年4月22日(水)19時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型コロナ患者の治療に当たる医療従事者 China Daily/REUTERS

中国はSARSが流行した2003年から救急治療に携わる医療関係者への特別手当を規定し、2016年に給金を平常の3倍にする条例を出している。封鎖中、防護服や人工呼吸器の製造も24時間体制で行った。

2003年に制定された「突発公共衛生事件応急条例」

2002年11月に中国の広東省で発生したSARS(サーズ=コロナウイルスに感染して発症する重症急性呼吸器症候群)は2003年7月まで中国を中心とした世界32ヵ国を巻き込んで猛威を振るった。

2003年3月で任期を終えることになっていた当時の江沢民国家主席は、何とかこの責任を次期国家主席・胡錦涛のせいにしようと、SARSの発生を隠蔽しようとした。

そこで敢然と抵抗したのが広東省にいた鍾南山で、国家の隠蔽を暴き、このままでは中華民族を滅亡させ全人類の命を危険にさらすとして伝染病の危険性と隠蔽の罪悪性を告発した。それにより当時のWHOはすぐに動いた。だから犠牲者は今般の新型コロナウイルス肺炎ほどは増えず、世界への感染拡大も一定程度で収まっている。

その時の最前線における奮闘ぶりにより、鍾南山は「民族の英雄」として多くの人民に慕われ尊敬されただけでなく、胡錦濤国家主席(2003年3月着任)も江沢民の隠蔽に怒っていたので、鍾南山側に立った。

そこで2003年5月9日に「中華人民共和国国務院令」(第376号)として国務院総理・温家宝の名において「突発公共衛生事件応急条例」を発布した。

その中の第九条には「緊急的な突発事件の応急処置に当たりその救助に従事した医療関係者にはそれ相当の補償をしなければならず、万一にも病気・障害・犠牲などになった場合はさらなる補償をしなければならない」という趣旨のことが書いてある。

2015年、具体的な補償額の規定を政令で指示

しかし、その補償額の数値に関しては具体的には書かれていなかった。

そこで習近平が国家主席になった(2013年3月)以降「伝染病が起きた時の医療従事者に対する安全防護と特別手当」が検討されるようになった。

中国には1989年2月21日に制定された「中華人民共和国伝染病防治(予防治療)法」があるが、SARSが大流行した翌年の2004年12月1日に改定され、さらに習近平政権に入った2013年6月29日改定されている。その直接的原因は2013年3月に流行った鳥インフルエンザ(H7N9)がきっかけだと考えていいだろう。

2015年1月6日、国務院は李克強国務院総理の名において「伝染病防治人員安全防護を強化することに関する国務院弁公庁の意見」(国弁発〔2015〕1号)を発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国と中国、外交・安保対話開始へ 3カ国首脳会合前

ワールド

岸田首相、日本産食品の輸入規制撤廃求める 日中首脳

ワールド

台湾の頼総統、中国軍事演習終了後にあらためて相互理

ビジネス

ロシア事業手掛ける欧州の銀行は多くのリスクに直面=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 8

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中