最新記事

台湾

台湾総統選「窮地に立つ習近平」に「温かな手」を差し伸べる安倍首相

2020年1月9日(木)19時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2020年台湾総統選挙に向けて蔡英文総統が選挙活動(1月8日) Tyrone Siu-REUTERS

11日に行われる台湾総統選は習近平政権に抵抗する蔡英文総統の勝利に終わるだろう。香港デモが彼女を後押ししているが、香港に次ぐ失態を演じる習近平を国賓として招くことにより安倍首相が北京を援護している。

香港デモが蔡英文政権の追い風に

1月11日、台湾の総統選が行われる。2018年11月の地方統一選挙で大敗を喫した民進党だったが、そのときは15%まで落ちた蔡英文総統の支持率は、2019年6月から香港デモが始まると38%にまで上がり、デモが大規模化するにしたがって45%にまで跳ね上がった。

台湾の若者は「香港の今日は台湾の明日」を合言葉に、北京政府の管轄下に置かれることに激しく抵抗している民進党の蔡英文政権を支持し、その勢いは今も衰えていない。

問題は投票行動で、2019年9月26日のコラム「台湾は民主を守れるか――カギを握るのは若者」に書いたように、どれくらいの若者が投票場に足を運んでくれるかだ。

台湾では投票日前の事前投票制度や在外選挙制度がないため、蔡英文総統は今月7日、記者会見を開き、若者たちに帰省して投票に行くよう呼び掛けた。

中国共産党の管轄下にある大陸の中央テレビ局CCTVでは、昨年前半まで台湾総統選に関して国民党候補者の奮闘ぶりを頻繁に伝えていたが、昨年11月24日に行われた香港の区議会議員選挙で民主派が圧勝してからは、台湾総統選の報道もピタリと鳴りを潜めている。

そのような中、本日1月9日の放送では、「あと48時間に迫りました!」と、運命の台湾総統選決戦に関して珍しく時間を割いた。そのCCTVさえ、「カギを握るのは若者」として、中国寄りの野党・国民党候補である韓国諭陣営の奮闘ぶりをアピールした。

CCTVはしかし、「実際、選挙に行くのは中高年層なので、国民党に有利」だと解説し、まだ観念してはいない。

たしかに総統選に関しては北京に距離を置く民進党の蔡英文現総統がおそらく再選されるだろうが、しかし同日行われる立法委員(国会議員に相当)選挙では民進党が完勝するだろうとは必ずしも言えず、「ねじれ国会」が現出する可能性は否定できない。

北京政府の工作を撥ねつけた台湾議会

しかしその立法院(国会)は、2019年12月31日、長時間に及ぶ審議の末、中国から政治的影響が及ぶことを阻止するための「反浸透法案」を可決した。

法案は、北京政府による政治工作に対抗するためのもので、北京政府は台湾の政治家への不法献金やメディア買収などにより、台湾の政治や民主制度に影響を及ぼそうとしてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の衛星打ち上げ、国連決議の「あからさまな違反

ワールド

ラファ避難民密集地区攻撃、死者45人 イスラエルは

ワールド

ポーランド、ロシア外交官の移動を制限へ ロシアは報

ワールド

北朝鮮、衛星打ち上げに失敗 通告期間内の挑発行為に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 6

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 7

    台湾を威嚇する中国になぜかべったり、国民党は共産…

  • 8

    トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執…

  • 9

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中