最新記事

犯罪

中国組織が暗躍、麻薬密輸は瀬取り化 フィリピン「超法規的」取締を継続へ

2019年12月14日(土)15時56分
大塚智彦(PanAsiaNews)

フィリピン沖で押収されたコカイン One News PH / YouTube

<麻薬取締のため人権侵害とも言われる強硬な捜査を続けてきた比ドゥテルテ。だが、その成果が実を結ぶためにはまだ時間がかかりそうだ>

内外の人権団体や米政府の「人権侵害批判」にも関わらず、国民の高い支持を背景に相変わらず麻薬犯罪対策で"超法規的殺人"を含む強硬策を続けているフィリピンのドゥテルテ政権。ところが、現在フィリピンで186の麻薬シンジケートが活動しているとの報告が出され、「麻薬戦争」がまだ道半ばであることが裏付けられた。さらにその麻薬密輸も海上で受け渡す「瀬取り」方式が増加、摘発逃れのために麻薬の防水パッケージにGPSを装着するなど巧妙化していることも明らかになった。

人権問題などを主に報じる「ブナ―ル・ニュース」などの報道によると、フィリピン麻薬取締局(PDEA)のアーロン・アキノ長官が12月12日に発表したところでは、フィリピン国内での麻薬摘発捜査はまだ続いており、複数の州知事や村長、村議会議長クラスの人物たちが麻薬ビジネスを運営したり、関与している疑いがあり、摘発のために監視活動を続けているという。

特に州知事など地位の高い公職にある疑惑の人物については「厳しい監視を続けている」と強調、証拠が固まり次第逮捕する方針を示唆した。

そのうえで現在フィリピン国内では確認されているだけで186の麻薬シンジケートが麻薬密輸、密売の活動を続けているという。

この中には最近摘発した中国人の大物麻薬業者のリアン・ホン容疑者も含まれていることを明らかにした。彼はマニラ近郊で4カ所の秘密麻薬製造工場を運営していた。ホン容疑者は中国本土の麻薬王といわれる"ドラゴン・ウー"の一派で、別の麻薬王ウーピン・チェンの組織とも関係が深いとされている国際的な麻薬犯罪者だったという。

フィリピン捜査当局の手入れを察知したためかトルコのイスタンブールに「高跳び」する直前にホン容疑者は逮捕された。

このほかにPDEAなどはこれまでにドラゴン・ウーのグループメンバーとみられる10人の麻薬犯罪容疑者を逮捕するなど組織壊滅に向けた捜査を進めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明

ワールド

ジョージア、デモ主催者を非難 「暴力で権力奪取画策
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中