最新記事

制裁

米中新たな火種、イランのミサイル開発を支援した危険人物の引き渡しをアメリカが中国に要求

New Trump Sanctions Target the Shadowy Dealer in China-Iran Missile Deals

2019年5月23日(木)17時00分
ジェフ・スタイン

今回も中国当局がリー逮捕に動かなければ、米当局はより厳しい対応を取る構えだ(その具体的な内容は明かしていない)。これまでも中国政府の無策を批判し、「メンツをつぶす」作戦を取ったが、中国政府は動かなかった。

「中国はこうした問題で恥をかかされるのを嫌う。われわれが一方的に中国人を制裁対象に指定することも嫌う」と、ある米当局者は言う。「それを承知の上で、われわれは圧力をかけてきた。今後は中国にとってさらに耐え難い仕打ちをする用意がある」

リーとイランの直近の取引がいつ行われたかは、米当局は明らかにしなかった。そのため、米当局がリーを改めて制裁対象とし、その活動の危険性を強く訴えたのは、中国よりも、イランを標的としたトランプ政権の国際的な政治キャンペーンの一環とも考えられる。

二者択一で逮捕を迫る

FBIの上級職員は21日、議会の公聴会で中国当局とリーについて証言を行った。「リーは中国の幽霊会社とフロント企業を通じて、アメリカの金融システムを常習的に悪用し、大量破壊兵器をイランに供給した」と、FBI刑事部のスティーブン・ダントゥオノ副次官補代理は、上院銀行・住宅・都市問題委員会の公聴会で述べた。リーはこれまでにもイランの核開発に関与していると言われてきたが、政府関係者がリーに関して「大量破壊兵器」という言葉を使ったのはこれが初めてだ。FBIの報道官はこれについてのコメントを避けた。

米当局者は、イランが支援するイエメンの反政府武装組織ホーシー派がサウジアラビアにミサイル攻撃を行っていることに言及し、「全てのペルシャ湾岸諸国」は、イランのミサイル計画を支援するリーの活動を警戒すべきだと述べた。

そして、リーを野放しにしている中国に怒れと訴えた。

「選ぶのは中国だ」と、ある当局者は言う。「その気になれば、彼らはリーの身柄を確保し、われわれに引き渡すこともできるはずだ。そうでなければ、われわれはペナルティーを増やし続ける。政治的、外交的、経済的な苦痛という形で」

「これはほんの序の口だ」と、この当局者は付け加えた。「中国に分からせるために、われわれが周到に練り上げた組織的キャンペーンの第1弾にすぎない。中国は思い知るだろう。信頼できる国家とみられたいのなら、リーを逮捕して引き渡し、アメリカの法廷で裁きを受けさせたほうがはるかに簡単だ、と」

20190528cover-200.jpg
※5月28日号(5月21日発売)は「ニュースを読み解く哲学超入門」特集。フーコー×監視社会、アーレント×SNS、ヘーゲル×米中対立、J.S.ミル×移民――。AIもビッグデータも解答不能な難問を、あの哲学者ならこう考える。内田樹、萱野稔人、仲正昌樹、清水真木といった気鋭の専門家が執筆。『武器になる哲学』著者、山口周によるブックガイド「ビジネスに効く新『知の古典』」も収録した。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、20万8000件と横ばい 4月

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中