最新記事

朝鮮半島

トランプの強気が招く偶発的核戦争

2017年10月19日(木)19時41分
ダン・デ・ルーチェ、ジェナ・マクローリン、エリアス・グロル

だが北朝鮮の核危機は、アメリカとソ連という対等なライバル国の対立とは異なる。世界最強の軍事力を持つアメリカに対峙するのは、貧しくて世界から孤立し、核兵器しか持たない北朝鮮だ。強い側のアメリカは、北朝鮮など敵として取るに足らない相手だとタカをくくっている可能性がある。トランプが先週、アメリカのミサイル防衛はほぼ完璧に敵のミサイルを撃墜できると豪語したのがいい例だ。技術面でまだ課題が残っていることを知らないのだろうか。

そうした過信は、北朝鮮に対する先制攻撃という選択肢を、実際以上に魅力的に見せる恐れがある。

米政府関係者は、トランプ政権は北朝鮮との対話を重視しているという。だがホワイトハウスは、軍事的な選択肢も除外しないと言ってきた。

ケネディも中国の核施設攻撃を考えた

米海軍大学教授のライル・ゴールドスタインは、先制攻撃で敵の主力を破壊するという決断の誘惑について研究した。1960年代、ケネディ元大統領とジョンソン元大統領は、当時核実験を始めたばかりだった中国が核兵器を持たないよう、奇襲攻撃で核施設を破壊することを真剣に考えたという。結局攻撃しなかったのは、中国が猛然とベトナム戦争に介入してくることを恐れたからに過ぎない。

今のアメリカと北朝鮮の関係は、当時のアメリカと中国の関係に似ていると、ゴールドスタインはいう。中国(当時)も北朝鮮も一見弱く、先に仕掛けたくなる「無防備さ」を持っている点が。

(翻訳:河原里香)

From Foreign Policy Magazine



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:円安の影響見極める局面、160円方向

ビジネス

中国ファーウェイ、自動運転ソフトの新ブランド発表

ビジネス

円債中心を維持、クレジットやオルタナ強化=朝日生命

ビジネス

日経平均は3日続伸、900円超高 ハイテク株に買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中