最新記事

自動車

米自動車大手2社の駄目っぷりでテスラの株が急上昇

2017年4月21日(金)18時00分
ダニエル・グロス(ビジネスジャーナリスト)

テスラへの高い評価は2大メーカーに対する評価の低さの裏返しだ Justin Sullivan/GETTY IMAGES

<GMとフォードを待つ「将来性なし」の烙印。米自動車業界は「大量生産・大量在庫」からの脱却を急げ>

電気自動車(EV)メーカー、テスラモーターズの株が急上昇している。

生産台数は1週間に数千台、手頃な価格での量産能力をまだ実証できず、赤字を連発、経営者は他のベンチャービジネスにも手を出している――そんな企業が株式時価総額(約480億ドル)でフォードを抜き、さらにGMも抜いて首位に躍り出た。GMもフォードも売り上げはテスラの20倍近く、巨額の利益を上げているだけに、なおさら衝撃的だ。

高騰するテスラ株は「買い」なのか。多くのベテラン観測筋は懐疑的だが、彼らは1つ見落としている。テスラが時価総額でGMとフォードを抜いたのは、単にテスラの評価が財務規模の割に非常に高いからではない。GMとフォードの評価が財務規模の割に低過ぎるせいでもある。

投資家はテスラの話には乗るがGMやフォードの話には乗りたがらず、予想される株価収益率(PER)は共に6倍前後。両社は深刻な危機に陥って10年近く過ぎた今も、危機を招いた「重荷」を引きずっている。広範な購買層をターゲットにしているため、テスラが費用をかけないような部分に大金を使っているのだ。

【参考記事】テスラが描くエネルギー新世界

最近は業種や規模に関係なく、どの企業も技術と市場力学の知識を使って、需要に応じて必要最小限の製品を生産し、売れた分だけ在庫を迅速に補充している。さもないと資本を無駄に固定し、過剰在庫で利益がふいになりかねない。テスラは生産したそばから販売し、未生産の車両何十万台分もの予約金を受け取っている。いわば顧客が製造費を出しているようなものだ。

一方、3月末時点でGMの在庫は92万6170台(98日分)、フォードの在庫は70万1801台(80日分)だった。何百億ドルもの資本が数カ月間固定されるわけだ。

巨額の広告費も負担に

大量に在庫があって売り上げが予想以上に低迷していれば、車の販売価格を大幅に下げて在庫をさばく必要があり、やはり利益に影響する。3月のインセンティブ(販売報奨金)はGMが平均取引価格の13.5%、フォードの平均インセンティブは前年から1800ドル増加した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、保険会社の株式投資制度拡大へ 83億ドルの追

ワールド

パレスチナ・ガザ住民、半数が他地域移住を希望=調査

ビジネス

午前の日経平均は小反落、買い一巡後は見送り 連騰へ

ワールド

加州高速鉄道事業、米政府は資金負担せず=トランプ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 4
    分かり合えなかったあの兄を、一刻も早く持ち運べる…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 7
    「欧州のリーダー」として再浮上? イギリスが存在感…
  • 8
    首都は3日で陥落できるはずが...「プーチンの大誤算…
  • 9
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中