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北朝鮮

金正男暗殺事件の背景 マレーシアに北朝鮮工作機関のダミー会社

2017年3月3日(金)09時11分

2月27日、北朝鮮偵察総局の傘下とみられるダミー会社「グローコム」は同国に対する国連制裁に違反して軍事用の無線機器を販売している、と国連報告書が指摘。写真は7日、グローコムのオフィスがあると記載されていたマレーシア首都クアラルンプールのビル(2017年 ロイター/Ebrahim Harris)

ここはマレーシア首都クアラルンプールのリトル・インディア地区にある老朽化したビルの2階。何の表示もないドアの向こうが、軍装備品を扱う「グローコム」のオフィス所在地だとされている。

国連報告書によれば、グローコムは北朝鮮工作機関が運営するダミー会社で、同国に対する国連制裁に違反して軍事用の無線機器を販売しているという。ロイターが閲覧したこの報告書は、安全保障理事会に提出された。

グローコムはマレーシアのウェブサイト「glocom.com.my」において、30種以上の無線システムを「軍事・準軍事」組織向けに宣伝していることがロイターの取材で明らかになった。

昨年末に削除されたグローコムのウェブサイトには、連絡先としてリトル・インディア地区の住所が記載されていた。ドアを叩いても反応はなく、外部の郵便受けには未開封の郵便物が溜まっていた。

実際、マレーシアにはグローコムという名称の企業は存在しない。だが、ウェブサイトと会社登記簿によれば、北朝鮮国籍の株主や役員が支配するマレーシア企業2社が2009年にグローコムのサイトを立ち上げたことになっている。

まだ未発表のこの国連報告書によれば、グローコムは実際に事業を営んでいるという。

昨年7月、中国から東アフリカのエリトリアに向けて航空貨物として出荷された北朝鮮製の軍用通信機器が、ある国で押収された。この国名は明らかにされていないが、押収された貨物には、「グローコム」というラベルが貼付された45箱の戦場用無線機と周辺機器が含まれていた。グローコムとは「グローバル・コミュニケーションズ・カンパニー」の略称だ。

グローコムは、北朝鮮の工作機関として海外での作戦と武器調達を担当する偵察総局の傘下にある、と国連報告書は未公開の送り状などの情報に基づいて指摘。国連に派遣されている北朝鮮代表団の広報担当者は、グローコムについて何も情報がないとロイターに語った。

2009年に採択された国連安保理決議の第1874号では、北朝鮮に対する武器禁輸措置を拡大し、軍用機器及び「関連材料」全般を含むものとした。

だが、制裁の実施状況は「依然として不十分であり、(加盟国のあいだで)一貫性がない」と国連報告書は指摘する。「(北朝鮮による)制裁回避手法は規模や範囲を広げ、巧妙になっている」と述べている。

北朝鮮と緊密な関係を持つ数少ない国の1つがマレーシアだ。両国市民は、これまでビザなしで相手国に渡航できた。だが、北朝鮮の指導者である金正恩氏と疎遠な関係にあった異母兄の金正男氏が13日にクアラルンプールの国際空港で暗殺されたことで、両国の関係も冷え込み始めている。

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