最新記事

独占手記

【再録】キャリー・フィッシャー「肖像権を手放していなければ」

2016年12月28日(水)13時15分
キャリー・フィッシャー(女優)

Paul Hackett-REUTERS


映画『スター・ウォーズ』シリーズのレイア姫役で世界的に有名な女優キャリー・フィッシャーが2016年12月27日、死去した。60歳だった。23日にロンドンからロサンゼルスに戻る飛行機の中で心臓発作を起こし、治療を受けていた。フィッシャーは2011年、『スター・ウォーズ』のグッズビジネスに関して本誌に手記を寄せていた。ここに再録する。

(上写真:キャリー・フィッシャー、2016年12月16日撮影)

 私は19歳のとき、映画『スター・ウォーズ』のレイア姫役に抜擢された。あのときの失敗は、肖像権を放棄したことだ。

 芸能人一家に育ったのになぜそんなことをしたのかと思われるだろうが、当時は肖像権のことなんて誰も知らなかった。映画のタイアップ商品を作る計画もなく、そういうものの市場規模も知られていなかったと思う。自分に魅力がないと思っていたわけではなかったが、それほど大切なものを手放したという意識はなかった。

 やがていろんな人がやって来て、こんなことを言うようになった。「ジョージ・ルーカス監督から、ソックスの商品化の許可をもらいました」。娘は私の顔がプリントされたソックスでそこら中を歩き回っていた。先日はレイア姫の絵が付いたカップケーキ用の飾りを見つけて、思わず買ってしまった。

 肖像権を放棄していなかったら関連グッズでいくらお金が入ってきたかなんて、もう知りたくもない。まったくひどい話だ。でも面白いこともある。最近知ったのだが、処方箋がないと買えない医療用のマリフアナに「レイア姫」という名前のものがあるそうだ。

 肖像権の一件ではジョージ・ルーカスに嫌みを言い続けている。でも、彼が申し訳なさそうなそぶりを見せたことはない。そもそも19歳で肖像権のことなんて分かるはずがない。しかし、ハリソン・フォードはあのとき33歳だった! どうして知らなかったのだろう。

もう引きずりたくない

 その手の話が出ていたのなら、契約の中身は同じだから私の耳にも入ったはずだ。きっとハリソンも肖像権は持っていないと思う。人生の大きな失敗だ。

 失敗は実に面倒なものだ。後悔するし、自分がかわいそうになる。そんな思いを抱えて長い時間を過ごしたくない。

 ドラッグに手を出したのは明らかに大きな過ちだった。そんな失敗がこれまでに何度かあった。レイア姫の肖像権の一件もそう。でも、引きずりたくはない。「スター・ウォーズ歯磨き粉」のライセンス料を払いなさいと怒るような、みっともないことはしたくない。

 それでもたまに、『スター・ウォーズ』でパドメ・アミダラを演じたナタリー・ポートマンは私より稼いでいるのかな、と思うことはある。彼女がオスカー像だけでなく、パドメ・アミダラの肖像権も持っているのなら、それは頭にくる。

【参考記事】【再録】レイア姫が語った『エピソード4』の思い出
【参考記事】「ハン・ソロとレイア姫」の不倫を女優本人が暴露
【参考記事】キャリー・フィッシャー死去、でも「2017年にまた会える」

[2011年9月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウォルマートが上場先をナスダックに変更、崩れるNY

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ワールド

インド、対米通商合意に向け交渉余地 力強い国内経済

ワールド

トランプ氏、民主議員らを「反逆者」と非難 軍に違法
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中