最新記事

トランプは「台湾カード」を使うのか?

2016年12月13日(火)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプ次期大統領(写真:ロイター/アフロ)

 今月2日に台湾の蔡英文総統と電話会談したトランプ次期大統領は11日、「一つの中国に縛られない」旨の発言をした。これに対し中国は激しく反発。国際的に通念化している「一つの中国」論に疑義の余地はあるのか?

次期トランプ政権は「台湾カード」を使うのか?

 12月11日、トランプ次期大統領は、米フォックス・ニュースのインタビューで「台湾は中国(中華人民共和国)の一部分である」という「一つの中国」論に関して、以下のように発言したとBBCが伝えた。

「私は"一つの中国"という政策があることは知っている。しかし貿易など、その他多くの取引に関して合意に達しない限り、なぜわれわれは"一つの中国"政策に縛られなければならないのか?」

「"一つの中国"を順守するかどうかは、南シナ海問題や貿易政策などの対立する分野で、中国側が我々と取引をするかどうかにかかっている」

 などだ。

 アメリカのメディアによれば、トランプ次期大統領の周りには「アメリカは中国との通商交渉で強硬姿勢を貫け」とする経済学者のピーター・ナバロ氏や徹底したタカ派のジョン・ボルトン(元国連大使)などがいて、覇権を強める中国に対して「台湾カード」を使えとアドバイスしているらしい。したがって来年1月にトランプ氏が正式に大統領に就任したあとは、「台湾カード」=「一つの中国」を外交交渉のカードとして利用する考えのようだ。

中国は一斉に猛反発

 中国では外交部のスポークスマンが12日の記者会見で「"一つの中国"原則は米中関係の政治的基礎だ」と深い懸念を示しただけでなく、中国政府系列の新聞やネット、あるいは中央テレビ局CCTVも12日の昼のニュースの中で特集を組むなど、猛烈な抗議を表明した。

 たとえば、外交部スポークスマンはつぎのように述べた。

 ●台湾問題は中国の主権と領土保全に関し、中国の核心的利益に関わる問題だ。
 ●"一つの中国"原則を堅持することは、中米関係発展の政治的基礎である。
 ●もしこの基礎が乱され破壊されるようなことがあれば、中米関係の健全な発展と両国の重要な領域における協力は、話し合うこともできなくなる。
 ●アメリカの次期指導者は台湾問題がいかに敏感な問題であるかを認識すべき。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中