最新記事

韓国経済

韓国「崔順実ゲート」の裏で静かに進む経済危機

2016年12月8日(木)11時00分
アンソニー・フェンゾム

アジアのライバルに完敗

 家計債務は住宅ブームのあおりを受けて、6月末時点で1257兆ウォン(約122兆円)という歴史的水準まで膨らんだ。政府は今年、来年とも2・5%前後の経済成長を見込んでいるが、韓国経済研究院は今年第4四半期は前期比でマイナスに落ち込むと予測している。

 IMFは声明で、韓国経済は「多くの構造問題」に直面していると指摘。高齢化する人口、輸出依存、一部企業の脆弱性、労働市場のゆがみ、生産性の低さ、不十分なセーフティーネット、巨額の家計債務などを挙げ、格差と貧困も懸念材料とした。

 今年上半期に16年の成長率を2・7%と下方修正したOECD(経済協力開発機構)は17年の成長率予測についても、当初の3・6%から3・0%に、さらに2・6%へと2度も下方修正した。

【参考記事】朴槿恵にとどめを刺せない韓国左派の事情

 世界経済フォーラムが公表した最新の国際競争力ランキングで、韓国の順位は26位。28位の中国より上だが、日本(8位)、香港(9位)、台湾(14位)といったアジアのライバルに大きく後れを取った。

 通貨ウォンは10月、対ドルで3・7%下落。韓国総合株価指数(KOSPI)は1・7%の下落で、東アジア各国で最悪の数字だった。だが市場のいら立ちをよそに、国会では野党による朴の弾劾決議の検討が引き続き進められるなど、事態収拾が困難な状況が続いている。

 韓国経済は北朝鮮の核実験、旅客船セウォル号の沈没事件など、さまざまな衝撃を乗り越えてきた。だが財閥への逆風、外部環境の悪化、権力の空白という三重苦に見舞われる可能性が高まった今は、素早い危機からの脱却を願うことしかできない。

From thediplomat.com

[2016年12月13日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中