最新記事

習近平の「三期続投」はあるのか?(「習・李 権力闘争説」を検証するPart3)

2016年10月25日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平国家主席・中共中央総書記・中央軍事委員会主席 Marko Djurica-REUTERS

 習近平が2022年以降も総書記&国家主席を続投するのではないかという憶測がある。来年の第19回党大会で定年を越えた王岐山を留任させて李克強を追い落とそうとしている説とともに。それらの可能性を分析する。

「三期続投説」に関して

 習近平と李克強が激しく権力闘争をしているということを主張する人々は、さまざまな憶測を創りだしては、世をにぎわしている。

 その中に習近平が二期目の2022年以降も総書記 (2023年に国家主席) の座を放棄せず、2022年から2027年までもトップの座に留まる可能性があるという「三期続投説」がある。

 そのためにいま開かれている六中全会は、習近平にとっては権力闘争の正念場だという分析をしている報道も見られる。

 そこで今回は、中国共産党においては、「任期は二期に限るという規定」があり、さらに国家主席に関しては憲法にその制限が明記されていることを、ご紹介しよう。

 前回のコラム「六中全会、党風紀是正強化――集団指導体制撤廃の可能性は?」を補足するなら「集団指導体制を撤廃するには民主集中制を撤廃しなければならず、民主集中制を撤廃するには憲法改正を行なわなければならない」ということになるが、「三期続投」を実行する場合も憲法を改正しなければならない。

「任期は二期を越えてはならない」という憲法の制約

 中華人民共和国憲法の第七十九条には、「国家主席および国家副主席の任職は、(全国人民代表大会の任期同様)連続して二期以上を越えてはならない」という規定がある。

 第六十七条には「全国人民代表大会常務委員会委員長および副委員長の任職は、連続して二期以上を越えてはならない」という条文がある。

 さらに第八十七条には「国務院総理、副総理および国務委員の任職は、(全国人民代表大会の任期同様)連続して二期以上を越えてはならない」という条文がある。

 したがってもし、習近平が2023年後もなお「国家主席」でいることは、憲法上、許されないのである。

 習近平は2013年3月から2018年3月までの5年間が、第一期目の国家主席、2018年3月から2023年3月までが第二期目の国家主席で、合計10年間、国家主席でいることは合法的だ。しかし第三期目、つまり2013年3月以降も国家主席でいようということは、憲法第七十九条に違反するので、不可能である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中