最新記事

ワークプレイス

つながりから「未来」を学び続ける

シナリオプランニングで石油危機を乗り越えたグローバルエネルギー企業[Royal Dutch Shell]

2016年5月13日(金)15時05分
WORKSIGHT

テクノロジーセンターにおける「背骨」の役割を果たすアトリウム。社員の出会いを促進させる重要なスペースである


[課題]  変化に対応し長期的に事業を継続させる
[施策]  未来から学ぶシナリオプランニングの活動を開始
[成果]  グローバルで競争力のある企業へ

 2009年、アムステルダム中央から延びる川のほとりに、5翼からなる巨大なグローバルテクノロジーハブが完成した。オランダ発のグローバルエネルギー企業ロイヤルダッチシェル。同社テクノロジーセンターは昨年100周年を迎えた。

 テクノロジーセンターの母体であるアムステルダム研究開発センターは1914年、1つの建物、たった9人で始まった。しかし、ロイヤルダッチシェル本体の成長にともない研究内容の拡大、長期化が加速、一時は27へクタール、50の建物にまで拡張していた。

「いってみればアムステルダムのなかに1つの村があったようなものですね」と同社コミュニケーション・アドバイザーのピーター・ヴァン・ボスショーテン氏は笑う。従業員は毎朝フェリーに乗って川を渡り、バラバラの建物へと通勤していた。「そこに欠けていたのは『つながり』です」

【参考記事】個人を尊重する社風づくりで電力業界の競争を勝ち抜く

失われたコンテクストを取り戻すために

 ロイヤルダッチシェルは元来、『イノベーションはコンテクストである』という哲学を掲げる企業だ。イノベーションはソリューション(問題解決)から生まれる。ソリューションを生み出すには、人間同士が出会い、つながらなくてはならない。

 しかしそれこそが、ロイヤルダッチシェルがグローバル企業へと成長し、アムステルダム研究開発センターが増設される過程で失われたものだった。

 失われたコンテクストを取り戻すこと。これを目的として、27ヘクタール・50の建物を7ヘクタール・1つの建物に集約。シェルが持つ三大テクノロジーセンターを代表するシェル・テクノロジーセンター・アムステルダムを誕生させた(他の拠点はインド・バンガロールと米国・ヒューストン)。

【参考記事】自治の精神で育む都市のフロンティア

「現在は、1つ屋根の下に50以上の国籍、1000人単位の従業員が働いています。様々なソリューションが必要だというなら、異なるバックグラウンドを持つ人と話し合うことが欠かせない。だったら全従業員を1カ所に集めるのがベスト、という判断に至ったんです」

オフィスやラボ、実験ホールをつなぐ背骨のようなアトリウム

 とはいえ、ただ同じ建物に人を集めればコンテクストが生まれると結論づけるのは早計だ。人の出会いとつながりを促す空間づくりへと、ヴァン・ボスショーテン氏の説明は進んでいく。

wsShell-1.jpg

(左上)2009年に誕生したシェル・テクノロジーセンター・アムステルダム。将来の拡張も見越して場所は決定されたという。(右上)大規模なプラントの実験施設。まるで工場にいるかのよう。(下)アトリウムは展示スペースとしても活用されており、シェルの歴史に関わるものやアート作品などが展示されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中