最新記事

イスラエル

インティファーダを警戒、イスラエル市民に「銃携帯命令」

イスラエル・パレスチナ両者とっての聖地で始まった衝突が新たな「インティファーダ」に?

2015年10月9日(金)17時00分
ジャック・ムーア

高まる緊張 先月中旬、聖地の封鎖に抗議するパレスチナ人 Ammar Awad-REUTERS

 イスラエルとパレスチナ間の緊張が高まり15年ぶりの「インティファーダ(パレスチナ人の民衆蜂起)」も懸念されるなか、エルサレムのニール・バルカット市長はイスラエル人住民に、常時銃を持ち歩くよう指示した。

「日増しに暴力が激しくなっていることを考えれば、銃器の所持する住民はそれを持ち歩くのは市民の義務だ」と、今週バルカットはイスラエル軍のラジオ放送で語った。「予備役の一種と考えて欲しい。イスラエルの強さの1つは、市民のなかに実戦経験をもつ元軍人が多いことだ。全員が銃を持てば、緊急自治に警官隊に協力できるので、町はより安全になる」

 今回の衝突は先月中旬、ユダヤ教とイスラム教の両方の聖地であるエルサレム旧市街地の「神殿の丘」(イスラム教では「アルアクサ・モスク[イスラム礼拝所]」)の周辺で、パレスチナ人住民と現地を封鎖したイスラエルの治安部隊がぶつかったことがきっかけだ。

 今月に入り、エルサレムでイスラエル人住民4人が刃物で刺されて死亡、ユダヤ人入植地で2人が銃で撃たれて死亡。一方、パレスチナ側ではイスラエル治安部隊の発砲で6人が死亡した。

前回は4000人以上が死亡

 さらに今週イスラエル全土で発生した襲撃事件ではイスラエル系住民13人がけがをした。パレスチナの赤新月社によると、今週ヨルダン川西岸地域の各所で発生した双方の衝突で、合わせて約400人のパレスチナ人が負傷した。

 バラカット市長は自分も銃を所持しているが、今回は許可を持つ住民すべてに銃の携行を求めた。ただしイスラエルでは、事実上アラブ人住民には銃の所有は許されてない。許可されるのは、27歳以上のイスラエルの永住者か住民で、基礎的なヘブライ語の知識があり、経歴チェックをパスした人に限られている。地元紙によると、2012年の時点で、イスラエル全体で17万人が銃の個人使用を許可され、成人30人に1つの銃がある計算になる。

 緊張の高まりを受けてイスラエルのネタニヤフ首相は、政府閣僚と国会議員を「神殿の丘」に近寄らせないよう警察に指示した。

 イスラエル側では今回の衝突が、パレスチナの第3次インティファーダに発展するのではないかという懸念が高まっている。ネタニヤフがイスラエルの政治家の聖地訪問を阻止したのは、緊張緩和を図るためだ。2000~05年に発生した第2次インティファーダでは、イスラエル人1000人以上、パレスチナ人3000人以上が死亡したが、衝突のきっかけとなったのは当時の首相アリエル・シャロンの「神殿の丘」訪問だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反落、一時500円超安 米大統領就任式控

ビジネス

午後3時のドルは一時1カ月ぶり154円台、日銀利上

ビジネス

12月末国内公募投信残高は前月比3.3%増の246

ビジネス

スペースXの宇宙船、打ち上げ後に空中分解 航空機運
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 2
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の超過密空間のリアル「島の社交場」として重宝された場所は?
  • 3
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 4
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    内幕を知ってゾッとする...中国で「60円朝食」が流行…
  • 7
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 10
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も阻まれ「弾除け」たちの不満が爆発か
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中