最新記事
科学

がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】

Scientists Discover Way To Reverse Cancer

2025年2月18日(火)11時20分
イアン・ランドール(科学担当)
細胞

qimono-pixabay.

<さまざまながん治療への応用につながることが期待される、新たな発見について>

がん細胞が健康な状態に戻る「分子スイッチ」が発見された。この画期的な研究成果を発表したのは、韓国・大田(テジョン)にある韓国科学技術院(KAIST)の研究チームで、新たながん治療が期待される。

本研究の筆者であり、生物学者のチョ・クァンヒョン(Kwang-Hyun Cho)教授は、「がん細胞を正常な細胞に戻すことができる分子スイッチを発見しました」と述べる。


 

正常細胞が不可逆的ながん細胞へと変化する直前の「臨界点」を捉えることで、この発見に至ったという。

「臨界転換」の瞬間を解明

研究者らによると、「臨界転換」とは、ある状態が特定の瞬間に急激に変化する現象を指す。たとえば、水が摂氏100度(華氏212度)で蒸気に変わるのもその一例だ。

がん細胞の形成過程においても、遺伝的・エピジェネティック(後成遺伝学)な変化が蓄積された結果、ある特定のタイミングで正常細胞ががん細胞へと転換する瞬間が生まれる。

チョ教授らのチームによると、発がんの過程、つまり「腫瘍形成(tumorigenesis)」において正常細胞は一時的に正常細胞とがん細胞が共存する不安定な状態になる段階があることが判明した。

システム生物学のアプローチを用い、この「臨界転換」を解析。がんの進行を制御する遺伝子ネットワークのモデルを構築し、それを基にがん細胞を正常細胞へと逆転させる「分子スイッチ」を特定したという。

さらに、大腸がん細胞を使った実験でこの手法を検証し、その結果、がん細胞が正常細胞の特性を取り戻すことが確認された。チョ教授は次のように述べる。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ急がず 緩和終了との主張も=10月理

ワールド

米ウ協議の和平案、合意の基礎も ウ軍撤退なければ戦

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中