最新記事

少子化対策

子どもをもつと収入が70%も激減 世界が反面教師にしている日本の「子育て罰」

2023年3月24日(金)13時30分
浜田敬子(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

お金がかかる時期に所得が減る、という矛盾

ペナルティーを日本で深刻にしているのが、子育て中の女性は正社員としての再就職が難しいという問題だ。女性の年齢別の就業率は、出産を機にいったん離職した女性たちが、子育てがひと段落した後、再び働き始めるのでM字の形を描くことからM字カーブと呼ばれる。第2次安倍政権時代、安倍元首相は「M字カーブの解消を目指す」ことを掲げ、確かにM字の谷は浅くなった。出産で退職する人は減り、離職期間は短くなる傾向にはある。

図表1 M字カーブ(女性の年齢階級別労働力率)
図表=内閣府「男女共同参画白書 令和4年版 全体版」P126より

だが、女性の正規雇用比率を年齢別に表したグラフはL字カーブと呼ばれる。いったん離職した女性たちが正規雇用で復職できないことから、グラフは右肩下がりになっているからだ。子育て中の女性たちの多くが非正規で再就職しているのだ。

図表2 L字カーブ(女性の正規雇用比率)
図表=内閣府「男女共同参画白書 令和4年版 全体版」P130より

子育てにお金がかかる時期に、所得が減るという矛盾。子どもがいるというだけで、再就職試験で正社員として採用されない理不尽。非正規雇用しかないのであれば、「壁」の範囲内で働こうと思うのは理解できる。「人が足りない」と言うのであれば、壁の解消より先に子育て中の女性たちの雇用を見直すべきではないのか。

「もう1人子どもを」と思える重要な要素

2022年11月に大和総研が発表したレポート「希望出生率を実現するために必要な政策」によると、正規雇用の女性の出生率が2010年ごろから上昇している一方で、専業主婦やパートで働く女性たちの出生率は低下傾向にあるという。

このレポートを見ると、仕事と子育ての両立支援策の充実が正規雇用の女性たちの出産を後押ししている一方で、幼児期の子どもを家庭で育てている世帯への支援が十分でないと感じる。さらに正規雇用として収入・雇用の安定が「もう1人」という出産意欲の重要な要素になっていることも推察できる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、ロシア凍結資産活用で合意 利子でウクライナ軍

ビジネス

政府関係者が話した事実はない=為替介入実施報道で神

ワールド

香港民主派デモ曲、裁判所が政府の全面禁止申請認める

ビジネス

英アーム、通期売上高見通しが予想下回る 株価急落
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中