最新記事

医療

「闘うのをやめるべき」? 慢性疲労症候群とコロナ後遺症に罹患、元CNN記者が語る「前向きになる方法」

Long COVID-led Medicine

2023年1月12日(木)12時30分
メレディス・ウルフ・シザー

――つらい慢性疾患を抱えて、どうやって前向きになれたか。似たような状況に置かれた人にどんなアドバイスをする?

私が学んだ最も重要な点は、休養の大切さだ。無理をせずに休む。病気と闘う唯一の方法は闘いをやめることだった。(ME/CFSを)発症したとき、うわべの自己定義と、生徒会長でクロスカントリー・チームのキャプテンという肩書を失った。そして見つけたのは決して失われないもの、自分の魂だった。

苦痛それ自体は耐え難いし無意味なものだが、そこに目的を見いだせば、苦痛を知恵に転換でき、自分の存在の意味を実感できる。

――コロナ後遺症の治療薬開発に希望が持てるか。

もちろん。希望は生物医学のイノベーションを生む最も重要な要因だ。患者は希望を捨ててはいけない。

政府は既存薬のコロナ後遺症への転用に向け、認可プロセスを迅速化させるべきだ。ここでも(ワクチン開発と同じ)「ワープ・スピード作戦」が求められる。

――コロナ後遺症の患者が多数に上ることで、感染症が引き金となる慢性疾患の研究が進む可能性はあるか。ME/CFSの解明も進む?

ハーバード大学の経済学者、デービッド・カトラーの試算によると、コロナ後遺症の経済損失は3兆7000億ドルに上るという。対応は待ったなしだ。コロナ後遺症とME/CFSを比較対照し、過去30年の研究成果を踏まえて進めれば、ME/CFSの解明にも役立つだろう。

――自己免疫疾患の多くはウイルス感染が引き金となる。この知見を医療のパフォーマンス改善にどう生かせる?

線維筋痛症やライム病といった病気は病原体への感染が引き金となることもあり、似たような病態をもたらす。1つのクリニックでこれら全ての疾患を扱えるよう専門家を養成すべきだ。そうすればコスト効率が上がり医療費を削減できるばかりか、有効なケアで数え切れないほど多くの患者の生活を変えられる。

――「患者中心の医療」のメリットは?

問題と共に生きてきた人、問題を最も身近に知る人が、問題解決の重要な源となるはずだ。コロナ後遺症では、自分自身が罹患した研究者たちが真っ先にその謎に挑み、他の研究者がその後に続いた。こういう進展は他の多くの病気でも起こり得る。このモデルは医療に限らず、さまざまな分野に通用する。当事者が中心となり、ボトムアップで解決策を探る方式だ。

――コロナ後遺症は障害に対する人々の意識を変えるか。

コロナ後遺症で障害を抱えた人たちが大勢出現した。それにより障害者支援の新しい運動が始まっている。

障害者の権利は人間の権利だ。どんな病気を抱えていようと、人は誰しも人生と自由と幸福を追求する天賦の権利を持つ。病者の尊厳も尊重されるべきだ。そう訴えるために私はこの本を書いた。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米名門UCLAでパレスチナ支持派と親イスラエル派衝

ビジネス

英シェル、中国の電力市場から撤退 高収益事業に注力

ワールド

中国大型連休、根強い節約志向 初日は移動急増

ビジネス

ビットコインが6%近く下落、FOMC控え 最高値か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中