最新記事
映画

ラスト15分で「家族ドラマから芸術の域に」...ワケあり3姉妹の再会を描く、映画『喪う』は傑作

A Story of Three Daughters

2024年11月1日(金)13時54分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)

映画『喪う』の場面写真、ナターシャ・リオンが演じる次女レイチェル

疎外感に悩む次女レイチェル COURTESY OF NETFLIX

長い間、感情面でも物理的にも父親の一番近くにいたのはレイチェルだ。父親が元気な頃からアパートで同居していた彼女は定職には就かず、スポーツ賭博で日銭を稼いでいる。

コーディリアたちの葛藤

映画の冒頭で父親は食事を取らなくなり、ほとんど意識不明で寝たきりの状態に。日中は看護師とホスピスのスタッフが訪問介護に来るので、姉妹は父親の寝室の隣の部屋に待機して時折様子をのぞくだけだ。


昼も夜もあり余る時間に、姉妹は食事の支度や後片付けから、レイチェルのお気楽さについてや訃報広告にケイティが何を書くかまで、ありとあらゆることでぶつかる。

何より、姉妹は互いの欠点をめぐってくすぶらせてきた不満をぶつけ合う。

ケイティの長女ぶった態度はほかの2人に姉妹というより従業員になったかのような気分を味わわせ、クリスティーナの落ち着きは独り善がりの完璧主義と映り、血のつながりのないレイチェルは老いた父親と同居してきたのに常に姉妹の中で疎外感を感じてきた。

いずれの嘆きももっともだが、こうした話題に触れるだけで誰かが泣くか、怒って部屋を飛び出していく。リア王の娘たちに例えるとしたら欲深いリーガンやゴネリルはいない。いわば3人ともコーディリアで、愛する父親を守り、父親が最期に必要とするケアができるのは自分だと確信している。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

11月の基調的インフレ指標、加重中央値と最頻値が伸

ワールド

米、ナイジェリア上空で監視飛行 トランプ氏の軍事介

ビジネス

仏、政府閉鎖回避へ緊急つなぎ予算案 妥協案まとまら

ワールド

米大統領、史上最大「トランプ級」新型戦艦建造を発表
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中