最新記事
ミュージカル

「みんな踊り出したくなる」──伝説の振付師ボブ・フォッシーの名作『ダンシン』が戻ってきた

Bob Fosse’s Dancin’ Comes Home

2023年4月1日(土)10時14分
ローレン・ジーラ

230404p56_BOB_01.jpg

1974年当時のボブ・フォッシー MICHAEL TIGHEーDONALDSON COLLECTION/GETTY IMAGES

どうすれば1978年の作品を2023年の観客に楽しんでもらえるか。最初はシレントも自信がなかった。でも「ボブはいつも時代の先を行っていた。新しいテクノロジーに通じ、映画もやっていた。その彼が生きていたら、どうするだろう? 何度も自分に、そう問いかけたよ」。

オリジナルの『ダンシン』はバーレスク仕立てで、司会者が曲名を紹介し、一曲ごとにダンサーが入れ替わるスタイルだった。でも、とシレントは言う。「それじゃ今は通用しない。だからもっと映画的な構成にしようと考えた」

それでフォッシーの手がけた映画を再チェックし、話に流れをつけ、新たな作品に仕上げた。結果、「どこでも勝負できる」ミュージカルに仕上がったという。

そのとおりだが、「ダンサーによる、ダンサーのための」作品という根っこの部分は変わっていない。

ダンサーが主役を張れることはめったにない、と言ったのはヤニ・マリン。普段は集団で、舞台の後ろで踊るだけで、「何かを語り出す人間」として物語や主役に絡むことはない。でも、『ダンシン』ではダンサーが主役だ。

「幸いにして、私に与えられた今回の役では自分自身を表現できる」とマリンは言い、フォッシーの振り付けを学び、『ダンシン』のオリジナルに出ていたシレントの演出で踊れるのだから、これは最高の経験になると続けた。

マリン(『ウエストサイド物語』の09年版ブロードウェイ公演では準主役級のアニタを演じた)に言わせると、シレントはフォッシーの振り付けを異次元で理解しており、それは肌で、体で感じ取るしかないものだった。

やはり今回のリバイバル版に起用されたダンサーのナンド・モーランドも、シレントについて「とにかく熱い男で、この作品のオリジナル版に出て、フォッシーの振り付けを体で知っている」と評した。

「(45年前のオリジナル作品当時の)感覚が今も生きていて、彼は自分で踊って手本を見せてくれた。ものすごく感動したよ」

モーランドは、『ウエストサイド物語』の20年版ブロードウェイ公演や『屋根の上のバイオリン弾き』の全米ツアーで知られる男。彼は以前から、フォッシーの「ファンクで曲芸的な」スタイルに刺激を受けてきたと言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU、ウクライナ支援で2案提示 ロ凍結資産活用もし

ワールド

トランプ政権、ニューオーリンズで不法移民取り締まり

ビジネス

米9月製造業生産は横ばい、輸入関税の影響で抑制続く

ワールド

イスラエル、新たに遺体受け取り ラファ検問所近く開
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 9
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中