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元東方神起のジェジュンやノーベル賞作家のハン・ガンが紹介...美学者の日記の言葉が感性のある人の心を打つ理由

2025年4月23日(水)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

そして美学者は日々の風景からも哲学的な真理を見出していく。たとえば祝霊山の渓流で水を観察しながら、〈水は愛の力学を教えてくれる。水の愛は急で、澱みなく、突き進む〉と記し、そこから〈流れるということは、虚しく消えるということ、だが流れているものだけが生きているのだ。「流れてゆく間」の時間。それが生の総量である〉と思索を深める。

また、〈ふたたび療養所の朝。木の葉が赤く色づいている。葉の合間に差し込む陽光が透き通っている。鳥たちは大きな声で鳴きながら遠ざかる〉という、ある秋の日の観察は、その翌朝にも引き継がれ、〈秋空がこんなに澄んで突き抜けている理由がわかる気がする。ほら、わたしは空っぽだ。何にも阻まれていない。四方が開かれている。どこも全部道なんだ〉と、存在論的な発見へと至る。


世界を愛することは世界の真理を理解すること

このように、美学者キム・ジニョンが切り取った世界とは、単なる審美的な観察の視点を超えた「存在の本質」を捉える哲学的な世界だった。

〈わたしにはいわゆる特別なものがある。それは果たしてわたしのポーズにすぎないのか。(中略)とはいえ、その特別なものとは何なのか〉と書いた美学者の「特別なもの」とは、つまるところ、美しさのなかに生の意味を見出す眼差しだったのかもしれない。死の淵でなお、失われることのない揺るぎない視点。

それは病と闘いながらも決して自己憐憫に陥らず、美を見出し、世界を愛し続けようとする戦いだった。〈そう、わたしは重い病にあっても愛の主体だ。泣く必要はない。泣かないでいい〉と。

死が近づくにつれて、文章は短くなり...

当初はそれなりに饒舌で数ページにわたることもあった日記は、肉体がいよいよ衰えていく頃には、次第に短くなっていく。しかし、文章が短くなるほど、その言葉はさらに瑞々しく澄みわたる。

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