最新記事
BOOKS

余命を知ったときに残るものとは...美学者は世界をどう切り取り、愛したか?

2025年4月18日(金)17時30分
キム・ジニョン
むくどり

音符のような鳥たち(画像はイメージです):GoranH_pixabay

<世界を切り取る短い言葉から感じ取れるものが無限に広がるということがある。読み込むほど心が洗われていく散文集>

ノーベル賞作家ハン・ガン氏が「しばらく外国にいたとき、この本を1日いちど、3回読んだ。毎日読んでもいい本」と紹介し、元東方神起のジェジュンもインスタライブで紹介した散文集『朝のピアノ 或る美学者の『愛と生の日記』』(小笠原藤子訳、CEメディアハウス)は、韓国の哲学アカデミー代表も務めた美学者キム・ジニョン氏による遺作だ。

美学者はどのように世界を切り取り、愛したのか。病に冒され余命を知ったキム氏が、亡くなる3日前までの日々を記録した本書より一部取り上げる。(全3回のうち3回目/1回目2回目

◇ ◇ ◇

76

昨日誰かが言った。

「わたしがつらいとき、先生はいつもこうおっしゃっていましたよ。ただ手放しなさい。それは放っておいて、ふだんやっていたことをしなさい......。そのお言葉をそっくりそのままお返ししたいです」

84

日曜の朝、青汁を飲んで散歩に出かける。遠い南方の海を越えていくという台風のせいで、朝の景色は曇り湿気ている。おかげで気持ちは一段と落ち着いているのだが、体はその分重く感じられる。散歩道の前に車を停めて、しばし音楽を聴く。昨日書いた短文を推敲しかけてやめた。明日は早くに診療予約を取っている。またも写真や表を前に判決を聞かされるのだ。疲れた心は重く揺れる。姿勢を軽く正す。揺れる気持ちの波の先に、喜びの紋様が描かれるのを待ち望む。

85

いま生きているということ
ーーそれをついつい忘れてしまう。


メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

コスタリカ、キューバ大使館を閉鎖へ 米の圧力とキュ

ワールド

インタビュー:短期志向のアクティビスト対策、現預金

ビジネス

午前のドルは159円後半で売買交錯、日銀の政策金利

ビジネス

午前の日経平均は大幅反落、FOMC後の米株安や原油
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 10
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中