最新記事

教育

中2で起業、高1で母校を買収した女性起業家が考える理想の教育とは

2021年12月5日(日)14時20分
仁禮彩香(TimeLeap代表) ピョートル・フェリクス・グジバチ(プロノイア・グループ代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

起業家の友人たちと比べて焦りを感じていた時期もある

ピョートル ご自身のポリシーとは? そのポリシーに反するものをどう見極めるのでしょう。

仁禮 私現在、2つの会社を経営していますが、共通するポリシーは、人類の生きるプロセスに貢献できるもの、自分が心から共感できるもの、かつ今後の自分に役立つ学びがあるものという観点で仕事をすること、です。TimeLeap社は自分の人生を生きる力を育む教育のコンテンツを、小中高生を中心とした若い世代に提供、ERRORs社では、生きる時間をどうデザインするかに関して教育以外の方法を試しています。

ここに行き着くまで、起業家の友人たちが、スケールを追求する事業で成功したり、数字を伸ばしたり、実績を出したりするのを見て、焦りを感じたこともあるし、その時は「教育はなかなか成果が出ないし、届けるのも難しい。今まで考えてきたものとは全く別の事業をやろうかな」と思って事業のアイデアなどを考え始めたのですが、気づくと「これは本質的に人類のためになるんだっけ?」というところにたどり着いてしまう。

このアイデアは楽しそうではあるし、喜んでくれる人はいそうだけど、人生にどれだけ作用するかというレベルで考えた時に物足りなさを感じてしまって、この先自分がこれに取り組み続けるイメージが全然見えない。わかりやすく言えば、私がピョートルさんにこの新規事業案について話をしても、賛同を得られる自信がない。それは心の底からやりたいと思っているわけではないからです。そういうことは自分がやるべきではない。そう考えています。

死を身近に感じる経験をして「時間は有限である」と考えるようになった

ピョートル 自身の成長とともに、ポリシーに基づいた価値観や信念は変化しましたか。

仁禮 私世界的な新型コロナウイルスの蔓延で、「死に直面するもの」が人類全体に降り注いできたことで、特に若い世代に「人生は限られているな」「いつ死ぬかわからないな」という価値観が植えつけられた印象があります。

死というものに直面する経験をした人は、そういう価値観を持ちやすい。私が大事にしている価値観の一つが、まさに「時間は有限である」ということですが、私も子どもの頃、死を身近に感じる経験をしました。有限性を理解して建設的に受け入れられると、その限られた時間をどう使うかに意識が向くようになります。私自身も、自分の成長と外部要因が重なって、最近さらにその意識が高まっていると思うし、全体的にそういう傾向があることを興味深く感じています。

ピョートル 資本主義社会の子どもたちは、パイロットや税理士になるために資格を取ること、会社に入るために大学に行くことをゴールとする仕組みの中でがんばっています。こうした教育の現状と、仁禮さんの理想の教育との溝とは、どういうものなのでしょう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中