最新記事
コメ騒動

「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政トライアングルの逆襲が始まった

2025年7月2日(水)17時42分
山下 一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)*PRESIDENT Onlineからの転載

小泉農水相の指南役は誰か

昨年夏スーパーからコメが消えたとき農水省は「卸売業者がため込んでいるのだ」と主張した。また、新米が供給されると価格が低下すると言いながら逆に価格が高騰すると、誰かが投機目的で売り控えているのだと主張した。これは同省の調査自体で否定された。消えたコメはなかったのだ。

これまで、農水省はコメ不足、価格高騰の責任を卸売業者などの流通に押し付けてきた。また、備蓄米の放出になかなか応じず、また放出を決定しても米価が下がらない仕組みを組み込んだ。高い米価を維持したいとするJA農協に忖度したのである。

また、米価低下の際にバラマキになる収入保険を採用するのも、零細兼業農家に立脚するJA農協の利益を考慮したものだろう。


小泉農水相の発言の後ろに、農水省幹部の姿が透けて見える。

流通に目が行くようにしたのは、減反から大臣や世間の注意を逸らすためではないだろうか? 

収入保険も兼業農家とJA農協擁護のニオイがする。かれらは農林族議員と同根である。野村哲郎元農水相は、小泉農水相が相談もしないであまりに矢継ぎ早に方針を出すので職員が困っていると言った。農水省幹部が野村氏にご注進に上がり不満を漏らしたのだろう。

今の農水省幹部は農政トライアングルの一員であり、改革に水を差す人たちである。独断専行したように見えた小泉純一郎氏には財務省という相談相手がいた。小泉農水相には、そのような人たちがいないように思われる。

農水省幹部は政策を作ることには長けてはいないが、政治的に動く能力には優れている。小泉農水相は、彼らを一掃して農水省内部に「チーム小泉」を作るべきである。そうしないと、いまの農水省幹部に足をすくわれてしまわないか心配だ。

「人主はただ一心にして、これを攻める者は衆」である。

※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg 
 
 

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、有効なビザ保有者の記録を調査 5500万人超の

ビジネス

FRB当局者、9月利下げに消極的 ジャクソンホール

ワールド

米カナダ首脳が電話会談、貿易巡り協議 再会談の見通

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRB議長講演に注目
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精神病」だと気づいた「驚きのきっかけ」とは?
  • 2
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 6
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 7
    米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓…
  • 8
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 9
    ドンバスをロシアに譲れ、と言うトランプがわかって…
  • 10
    フジテレビ、「ダルトンとの戦い」で露呈した「世界…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中