最新記事
BOOKS

朝日新聞名文記者が「いい文章」を書きたい新人に最初に必ず教えること【ベストセラー文章術】

2024年9月10日(火)12時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
文章を書くライター

「抜けるように青い空」と書く人は、空を見て書いていない/StockSnap-pixabay

<独自の表現力を身に付けたいなら、常套句を書くな。ベテラン記者が新人に最初に伝える、文章の極意とは>

「抜けるように青い空」と書く人は、空を見て書いていない。どういうことか? 朝日新聞記者で作家の近藤康太郎氏のもとには、文章力を磨くために若い記者が集まる。いずれは「独自の視点」がある文章を書けるようになりたいと考える彼らに、基礎からその方法と勉強の仕方を教え、エース記者に育つ者も多い。

私にしか書けないものを、書く。プロに限ったことではない。誰もが文章でコミュニケーションをとる今日、「ちょっといい」と思われる文章を書くためにはどうするか。必ず最初に教えるのが「常套句をなくして書く」技術だという。

プロにも通用する25の文章技術を解説する『三行で撃つ〈善く、生きる〉ための文章塾』(CCCメディアハウス)より取り上げる。

※本記事は前後編の前編 

◇ ◇ ◇

常套句は新聞の「エモ記事」化につながる

わが家に集まる塾生たちに、いちばん最初に教えるのは、「常套句をなくせ」ということです。

塾を卒業してデビューしていったフリーライターが述懐していたことですが、彼女はある日、いつものようにわたしに原稿を怒られ「常套句は親のかたきと、大きく紙に書いて、机の前に貼っておけ」と面罵(めんば)されたのだそうです。塾と言ってもほとんどは酒を飲みながらの宴会ですから、さては酔っていましたか。

常套句とは、定型、クリシェ、決まり文句です。たとえば、秋の青空を「抜けるように青い空」とは、だれもが一回くらいは書きそうになる表現です。「燃えるような紅葉」などと、ついやらかしてしまいますね。

新聞記者は一年目、二年目といった新人のころ、高校野球を担当させられるので、高校野球の記事は常套句の宝庫(?)です。

試合に負けた選手は「唇をかむ」し、全力を出し切って「胸を張り」、来年に向けて練習しようと「前を向く」ものです。一方、「目を輝かせた」勝利チームの選手は、「喜びを爆発」させ、その姿に「スタンドを埋めた」観客は「沸いた」。

常套句を使うとなぜいけないのか。あたりまえですが、文章が常套的になるからです。ありきたりな表現になるからです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

加州高速鉄道計画、補助金なしで続行へ 政権への訴訟

ワールド

コソボ議会選、与党勝利 クルティ首相「迅速な新政権

ワールド

訂正中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 30

ビジネス

中国、無人航空機を正式規制 改正法来年7月施行
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中