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セブン-イレブン「加盟店の乱」の影で一変した本部の態度 業界全体でも時短営業が拡大

2022年7月18日(月)14時20分
中野大樹(東洋経済 記者) *東洋経済オンラインからの転載

その後、徐々に時短営業する店舗は増えていき、2022年2月末時点でセブン全加盟店の約5%に相当する約1000店に達した。ローソンでも2018年度末は40店舗に過ぎなかった時短店舗は、2022年7月1日時点で約440店に拡大している。

変化の波は、セブン本部がかたくなに禁止してきた値引き販売にも押し寄せた。

セブンは2009年、値引き販売を理由に一部加盟店との契約を解除するなど、強硬に対応してきた。公取委が同年に独占禁止法違反の措置命令を出し、値引き販売による契約解除ができなくなった後でさえも、加盟店に値引きを認める旨の周知は行わず、値引き手続きを煩雑にするなどの"対策"を講じてきた。

ところが経産省の検討会を機に潮目が変わった。2020年春からは消費期限間近の食品を客が購入すると5%のポイントを付与する制度を全店で導入し、事実上の値引き解禁に踏み切る。加えて、値引き販売のための煩雑な手続きもなくした。

"態度軟化"の背景に鈴木敏文氏の退任

東大阪の訴訟を経て、大きく変化したセブン本部。そこには、かつて絶対的な権力を誇った鈴木敏文会長(当時)が2016年に退任したことも影響しているとの見方が関係者の間では根強い。

前出のオーナーは「以前からオーナーの抵抗の試みはあったが、鈴木会長時代はことごとく失敗に終わってきた。鈴木会長がいたら、松本さんの件も表沙汰にはさせなかっただろう」と指摘する。

というのも、鈴木会長時代は加盟店オーナーへの締め付けが今とは比較にならないほど強かった。

警察や自衛隊のOBをセブン本部の幹部として招き、加盟店や社内における上意下達の組織体制と、エリアごとに管理を行う現在の手法を確立してきた。1992年にセブン社長に就任した、陸上自衛隊出身の栗田裕夫氏などが代表格とされる。

加盟店オーナーによると、鈴木元会長の退任を境に本部による加盟店への締め付けが緩くなったという。2022年5月に開催されたセブン&アイ・ホールディングスの定時株主総会では、オーナーでもある株主から「鈴木会長の暗黒時代から比べると、最近は会社の雰囲気が非常に良くなっていると感じている」との声も上がった。

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