最新記事

コロナ禍

緊急事態宣言解除で人材確保に悩む飲食業 「第6波」か「機会損失」か

2021年10月1日(金)16時25分
夜の繁華街

緊急事態宣言の全面解除で、一部の飲食店からスタッフの採用に気をもむ声が出ている。写真は昨年5月、都内で撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

緊急事態宣言の全面解除で、一部の飲食店からスタッフの採用に気をもむ声が出ている。通常モードへの復帰を見据えた人材確保の動きが業界全体に広がれば、採用の難易度が高まる可能性があるためだ。新型コロナウイルス感染症「第6波」のおそれが残る一方、繁忙期の年末に十分な人材が確保できなければ機会損失にもつながりかねず、経営者は難しい判断を迫られている。

「今まさに募集をかけようとしている──」。横浜市でラーメン店やビアバーなど計8店舗を経営する麻生達也さん(47)。これまで時間を短縮して営業し、各店舗のスタッフ数も通常の半分程度に絞ってきた。営業時間が午後9時までなら現在の態勢で乗り切れるものの、「完全に通常営業に戻るなら人手は足りない。教育期間も考えるなら今がそのタイミング」として、スタッフの採用を始める。

ただ、頭の片隅にはコロナ「第6波」もある。これまで政府が緊急事態宣言やまん延等防止等重点措置の発令を繰り返し、その方針確定が遅すぎて振り回されてきたことなどを考えると、スタッフを一気に増やすことには心理的な抵抗もある。

「第6波」を警戒するのは大手も変わらない。東京・台東区の「つぼ八」浅草駅ビル店は7月12日以降休業していたが、宣言解除に合わせて営業を再開する。ただ、どれだけ客が戻るか予測が難しいことから、「現在登録しているアルバイトのメンバー20人ほどでシフトを組む予定」だと店長は話す。客足が十分に戻ってきた際に人手を増やすという。

一部の経営者からは、採用を決断しても計画通りに進むかどうか不安の声も聞かれる。

求人メディアの関係者によると、飲食店は大まかに8割がアルバイトやパート、2割が正社員といった構成で運営されている。バイトやパートは主に若い学生やフリーター、主婦などが担い手となるが、コロナ禍が1年半以上続いたことで求職者の仕事探しに対する考え方も変わってきたという。

リクルートは9月9日付のリポートで、求職者が職場の感染対策やオンラインツールの導入を重視するようになってきており、「飲食をはじめとした接客業では、これまで通り求人を出しても以前のように多くの応募が集まらなくなる懸念がある」と指摘。需要増加局面で十分な人材を採用できない場合、機会損失につながる可能性も考えられるとした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、1万件減の22.2万件 労働市

ビジネス

「ECB利下げ開始確実」とポルトガル中銀総裁、6月

ビジネス

ECBは利下げ急がず、6月以降は慎重に=ラトビア中

ビジネス

英中銀、利下げ待つべき 物価圧力の緩和確認まで=グ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中