最新記事

【13】アイスランド、アイルランド、スペイン。

ウラ読み世界経済ゼミ

本誌特集「世界経済『超』入門」が
さらによくわかる基礎知識

2010.04.12

ニューストピックス

【13】アイスランド、アイルランド、スペイン。

2010年4月12日(月)12時02分

 今回の金融危機が起こるまで、この3カ国の成功は世界から注目を集めていた。北欧の漁業国だった人口30万人のアイスランドは、外国から借り入れた資金をてこに世界中で投資銀行業を展開。国民1人当たりGDP(国内総生産)で世界3位まで躍進した。国策として金融業に力を入れていたところへ、00年代半ば以降、インフレ対策で高金利政策を取ったことから、外国から預金や投資マネーが殺到した。

 一方、アイルランドとスペインは99年のユーロ発足に参加するため金利を引き下げたことから、借り入れが容易になり不動産投資の大ブームが起きた。両国とも、移民の流入による人口増と好況による所得増が相まって、住宅需要が爆発的に拡大した。06年のスペインの住宅着工件数は、人口が5倍ある英仏独の合計を上回った。

 それが天国とすれば、金融危機以降は3カ国とも地獄の様相だ。1月のスペインの失業率はEU(欧州連合)内でトップの14・8%。IT産業の隆盛などで「ケルトの虎」と呼ばれたアイルランドも08年9月にユーロ圏で最初の景気後退に突入した。

 アイスランドでは通貨が暴落。08年前半には1ドル=60クローナ前後だったが、9月には200クローナを超え、外貨建ての借金が膨れ上がった。

 大手銀行の借金はGDPの10倍に上り、10月には最大手銀行が外債の利子を支払えない債務不履行に陥った。財政難で各国にある大使公邸を売りに出したり防衛庁の廃止を検討するなど、まさに国家破綻の瀬戸際にある。

 グローバルな成長モデルの模範とされた3カ国だが、これからは借り入れを元手にした金融や不動産のバブルの高い代償を支払わなければならない。

[2009年4月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中