コラム

経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消えた

2025年11月15日(土)20時11分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<経営・管理ビザの資本金が3000万円に値上げされ、「日本ドリーム」が突然消えたことに中国人は大きな衝撃を受けている>

中国の国家主席・習近平(シー・チンピン)が「中国の夢」の実現を全国民に呼びかけている一方で、中国の中産階級や富裕層は自分たちなりの「日本の夢」をかなえていた。日本政府は、海外からの投資や起業人材を呼び込み、経済の活性化を図るために「経営・管理ビザ」という制度を設けた。必要な資本金はわずか500万円。経営の経験がなくても、日本語ができなくても、日本人の社員を雇わなくても在留資格を得ることができる。

中国人は持ち前の「聡明さ」でこの制度を理解した。つまり、500万円を出資して会社を登記し、オフィス(場合によっては机一つだけ)を借りれば、家族全員で日本に滞在できる。清潔で安全な社会環境、充実した医療制度、無料の公教育──それは、PM2.5や過度な競争、不安定な政策から逃れたい中国人にとって、まさに「日本ドリーム」だ。


「500万円で日本に移住できる!」。そんな宣伝文句は中国ネット上にあふれている。日本の出入国在留管理庁の統計によると、2024年末時点で「経営・管理ビザ」を持つ外国人は4万1615人。中国人は2万1740人で約52%を占めている。

もちろん本気で起業する人もいるが、実際にはいわゆるペーパーカンパニーが多い。入管が現地調査で訪れるとオフィスの扉は固く閉ざされ、誰もいない場合がある。報道によれば、大阪市内にある5つの古いビルやマンションに、中国系法人計677社が登記をしていた例があった。また、申請者が友人や仲介業者から500万円を一時的に借り、銀行残高証明で資金があるように見せかけるパターンがよくある。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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