コラム

トランプ、強硬保守とソフト路線の「バランス戦略」は成功するのか

2016年11月24日(木)17時00分

Lucas Jackson-REUTERS

<人事登用で強硬保守派とソフト路線のバランスを取ろうとするトランプ政権移行チーム。こうしたビジネス的「使い分け」手法を就任後も続ければ、いずれは「言行不一致」との批判を受けて破綻しかねない>(写真:22日にニューヨーク・タイムズ本社に入る際、群衆に手を振るトランプ)

 トランプ次期大統領の政権移行チームについては、大きく2つの動きを見せています。1つは人事で、こちらは依然として難航しているようで、24日の感謝祭の休日までに決定したのはごく少数のポストに過ぎません。

 もう1つの動きはイメージ作りです。今月9日未明の勝利宣言の冒頭で宣言したように「対立の傷を癒やして和解を」という動き、つまり激しい中傷合戦によって分断された世論を何とか一つにする、そのためにはイメージアップをしなくてはならないからです。

 その意味で、今週22日に実施されたニューヨーク・タイムズのインタビューは、大変に興味深いものでした。このインタビューは、直前まで実現するかどうか危ぶまれていたのですが、ランス・プリーバス氏(共和党全国委員長から、新政権の首席補佐官に内定)が根回しをして実現したもののようです。

【参考記事】トランプが暴言ツイートを再開させた「ハミルトン事件」

 インタビューはNY市内のタイムズ本社で行われ、同社のアーサー・サルツバーガー会長以下の幹部が並ぶ中で、トランプ次期大統領との対話を進めるという形式で行われました。

 冒頭トランプ氏は、「ミシガン州での勝利が大きかった」ことを強調し、このことは自分が労働者、マイノリティからも選ばれていることを意味しているのだと力説していました。

 その上で、「選挙戦を通じてタイムズの自分に対する書き方はヒドかった。ワシントン・ポストもヒドかったが、それは『単発のヒドさ』だった。だが、タイムズは常にヒドかった」と、ひとしきり苦情を言った上で、「だが自分はタイムズ紙にはずっと敬意を払ってきた」ので、和解をしたいと述べたのです。

 インタビューを通じての発言もかなりソフトなものでした。まず「ハイル・ヒトラー」の真似をして、「ハイル・トランプ」などと挙手の仕草をしている白人至上主義者のグループに関しては「この種の『オルタナ右翼』が活発化することは望んでいない」と、ピシャリと言っています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも

ビジネス

米バークシャー、アルファベット株43億ドル取得 ア

ワールド

焦点:社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 8
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 9
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 10
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story