コラム

トランプ、強硬保守とソフト路線の「バランス戦略」は成功するのか

2016年11月24日(木)17時00分

 また、選挙戦中はあれほど「特別捜査官を設置してヒラリーを訴追する」と言い続けたにもかかわらず、「ヒラリーへの捜査は行わない」とした上で「私はクリントン夫妻を傷つけたくない。本当にそう思っている。彼女は大変な功績があり、同時に様々な苦悩を背負っている」という言い方で理由を説明していました。

 また、パリ条約や地球温暖化について、著名なコラムニストのトーマス・フリードマンが質問すると、「気候変動の理由に関しては、オープンマインドで考えたい。人為的な理由もあるようだ」と述べ、これも選挙戦中の「温暖化否定論」とは異なった見解を述べています。

 ということで、非常に中道的なポジションで答えているのです。では、トランプ氏はこのまま「よりソフトな方向」へ寄っていこうとしているのでしょうか?

 必ずしもそうでもないようです。どうも、現在の政権移行チームが狙っているのは「バランス」の追求です。つまり「強硬な保守派路線」と、より「広範な支持を狙ったソフト路線」の双方を抱えることで、バランスを取る戦略です。

【参考記事】動き出したトランプ次期政権、「融和」か「独自色」か?

 つまり、バランスと言っても「中道現実路線にフォーカスして、実務的な統治能力と、世論との対話能力を磨く」のではなく、「強硬路線」と「ソフト路線」の両方を抱え続けるということです。

 例えば、23日水曜日には2人の女性閣僚が発表になりました。これに対して一部では、女性閣僚を登用するのは良いことで「全面的にソフト」な路線へ進んでいるという報道もありますが、そう単純ではないと思います。

 確かに、国連大使に起用したニッキー・ヘイリー知事(サウスカロライナ州)は、ティーパーティー系の政治家に区分けされることはありますが、トランスジェンダーの人権問題や、南部連邦旗の扱いなどでは中道的な立場を取っていましたし、何よりも大統領選中のトランプ陣営のことを「人種差別的」だと厳しく批判していたわけです。

 外交経験はほぼ皆無であり、閣僚級の国連大使というのは重責であるし、インド系の移民二世で後にキリスト教に改宗するまではシーク教徒として育ったということが、例えばイスラム教文化圏や正教の文化圏の人々とのコミュニケーションを行う上で、プラスなのかマイナスなのかという疑問はあります。それはそれとして、そのようなマイノリティのヘイリー氏を起用するというのは、ある種の「ソフト路線」と言えるでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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