コラム

第3次石油ショック(?)への日本の対応を考える

2026年03月04日(水)14時40分

イラン革命防衛隊がホルムズ海峡の「封鎖」を宣言するなかUAE沖合に停泊するタンカー Amr Alfiky-REUTERS

<最悪の場合は超円安が進行する中での原油高という厳しいシナリオとなる可能性も>

1973年の第1次石油ショックは、日本経済に大きな打撃を与え、高度成長に終止符を打たされることにもなりました。一方で、1979年の第2次石油ショックの際には、原油高騰という逆境を日本経済はチャンスに変えることに成功しました。低燃費の自動車の開発と販売が一気に拡大して、経済大国日本は世界のトップに駆け上がったのでした。

その後、湾岸戦争時の原油高騰、さらには2007年前後の需要拡大に基づく原油高騰などがありましたが、いずれも日本への影響は限定的でした。原油が高い時期には円が高く、またアベノミクスで円安に振れた時期には、幸運なことに原油が比較的安かったからです。


そんな中で、今回突然始まったイラン攻撃は、ペルシャ湾の両岸の勢力が激突するという日本にとって最悪の展開が見えてきました。現時点では、日替わりで事態が変化していますので、明確なことは言えませんが、このまま長期化すると日本にとっては第3次石油ショックになるのは間違いありません。

最悪の場合は超円安が進行する中での原油高という厳しいシナリオとなる可能性もあります。当面の課題はエネルギーの確保ですが、LNGなどはすぐにも影響が及びそうであり、対処が必要です。

日米首脳会談でエネルギーの確保を

まずは、今月下旬に予定通り日米首脳会談が行われるのであれば、ホルムズ海峡が機能しない中では、「米国産のシェール・オイル」などの輸入と、アメリカがやがて管理するであろう「ベネズエラの超重質油」の精製への参加を申し出る必要があると思います。いずれも、卑屈になって値引きを懇願するのは国益に合致しないので、相互がウィンウィンになる取引を通じて量の確保を目指すべきでしょう。

これに加えて、柏崎刈羽や泊などで、原子炉の再稼働を加速して電源の安定を図る必要があります。若返りつつある有権者は、以前ほど頑固に拒否はしないと思いますが、高市政権としては丁寧に進めて安定的な合意形成を目指すべきでしょう。

問題は、仮に第3次石油ショックが深刻かつ長期化した場合に、日本はどんな産業構造を目指すのかという点です。

1つは、脱製造業をより加速することです。これまでの脱製造業は、販売地での生産を強いられたり、生産拠点を労働力のある国に移さざるを得なかったりと、消極的な理由で進められてきました。その結果、代替となる産業のないままに空洞化の悪影響が増大して、国内経済の衰退に至っています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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