コラム

日本経済低迷の主因である「空洞化」をなぜ総選挙で議論しないのか

2026年02月04日(水)14時15分

衆院選公示前日の1月26日に日本記者クラブで行われた党首討論会 David Mareuil/Pool/REUTERS

<消費減税や財政規律に終始し、経済成長をどう取り戻すかという議論はほとんど見られない>

日本では総選挙が進行中ですが、数年前とくらべて風景が変わったのは、日本が貧しくなったという事実を誰もが認めるようになったことです。例えば、俗に言う「外国人問題」については、基本は排外的な感情論ですが、円安を利用して札ビラを切る観光客や不動産投資に対して嫌悪を抱くのはある意味当然です。その嫌悪感情は日本が貧困化したことの裏返しであり、だからこそ余計に腹が立つということは共通認識になっています。

考えてみれば、東証の株価を基準にバブル崩壊を考えるのであれば、1989年末につけた高値については、ほぼ36年戻らなかったわけであり、その間、多少の上がり下がりはあっても、経済は低迷を続けたのでした。最近の株高についても、円安によりかさ上げされている面が大きいことを加味すれば、決して経済の底力が回復したわけではありません。


こうした長期低迷については、自民党の責任だという声もありますが、そうした声を上げている政党が、経済を活性化する政策を持っているのかというと、全くそうではありません。成長政策を議論するどころか、一体どうして世界最高の生産性と競争力を誇った日本経済がここまで長期の低迷を続けているのか、その診断が全くできていないのを感じます。

今回の総選挙が盛り上がりに欠けるのは、減税で生活を助けるのが大事なのか、それとも財政を健全化して国家破綻を回避するのが大事なのかという議論に終始したからです。しかも、財政を緩めると超円高と長期金利の暴騰で、破綻を待たずして官民が「詰む」という兆候が現実となる中では、財源なき減税論議もしらけてしまった格好です。

経済低迷の最大の原因である空洞化

本来はそうではないはずです。経済低迷の真因を定め、その病根を除去して健康体に戻す、そのための選択肢を有権者に対して複数提示して、経済を成長軌道に戻すための選択をするべきなのです。

では、経済衰退の真因はというと、すぐに少子化・人口減であるとか、2度の大震災とリーマン・ショックなど天災人災の結果だというような説明ばかりが一般的になっています。これでは老衰で死を待つばかりだとか、事故にあったので不可抗力だというような説明であり、前向きな対策にはつながりません。

少なくとも、現状は全くもっておかしいとしか言いようがありません。大卒50%を超える超高学歴国家であるのに、観光業を主要産業にするなどというのは間違っています。産業として経済にプラスする存在というのなら理解できますが、主要産業になり、しかも現在すでにGDPの6%前後を観光に依存しているというのは、何かがおかしいのです。

最大の原因は空洞化だと思います。昨今の自国ファースト経済の流行に見られるように、どんなに優秀な製品を廉価で提供していても、各国は「自国のGDPと雇用を守る」ために、輸入を現地生産に切り替えよという圧力を加えてきます。こうした点でも分かるように、日本の官民ともに現地生産化は好きでやっているわけではありません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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