コラム

円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?

2025年12月17日(水)15時00分

日銀の利上げで円安が止まる期待感はあるようだが Rodrigo Reyes Marin/Zuma Press Wire/REUTERS

<過度の円安は明らかに問題だが、円高に振れれば海外投資マネーの撤退を招くおそれも>

日本銀行は、12月18~19日に行われる金融政策決定会合で政策金利を現在の0.5%程度から0.75%程度に引き上げる公算が大きいと言われています。利上げが実現するとすれば、今年1月以来、約1年ぶりとなります。金利が0.5%超となると、この水準は1995年以来の高水準になります。

高市政権の政策としては、故安倍首相の唱えた「アベノミクス」の延長という性格から、金融緩和と円安という指向性を持っています。ですが、報道によれば現在の物価高を前提とすると、金利上昇に伴って円安が止まるのであれば、物価抑制になるので金利の引き上げを支持しているようです。


現在の円安は、日米の金利差が大きな要因となっているとされます。アメリカのFRB(米連邦準備理事会)が利下げを進めている一方で、日銀が金利を上げれば金利差は一気に縮小して、ダラダラと続いた円安が止まる、高市政権にはそうした期待感があるようです。

では、現在の日本経済には円高と円安のどちらが有利なのかというと、これは問いとして簡単ではありません。

円安で消費者物価も国内企業原価も上昇

まず現在の円安トレンドですが、メリットとしては日本発の多国籍企業が世界で稼いだ数字が、日本円に換算した場合に大きく見えるということがあります。決算数字もそうですし、株価も同様です。多国籍企業としてグローバル経済にアクセスしている企業の場合は、高い賃金水準も可能になります。

一方で、エネルギーや食糧、資材などの多くを輸入に頼る中では、円安になると消費者物価も国内企業の原価も上昇してしまいます。現在はその痛みが非常に大きくなっているわけです。問題は更に円安が進んだ場合です。

更に円安が進んで限りなくドル円が200円に近くなっていくと、通貨としての円や日本国債への信頼が揺らいでいくことになります。そうなると、法人個人を問わず資産の海外逃避が起きることや、金利が暴走して通貨の価値が壊れるハイパーインフレに近い状況も警戒しなければなりません。過度の円安は、明らかに問題です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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