コラム

15年の経過とともに、忘れられつつある9・11

2016年09月13日(火)15時30分

 このように、「9・11」については、様々な「忘れられ方」が始まっています。そんな世相ですから、例えばテキサス州で「ツインタワー倒壊」をパロディにしたCMが物議を醸したりとか、ほかでもないニューヨークの「9・11慰霊公園」で式典の数日前に「バチュラー(独身最後の)パーティー」と称して「卑猥な悪ふざけ」をやった連中が摘発されたりというような事件も起きるわけです。

 しかし、それ以上に罪深いのはアメリカが中東情勢一般に対して関心を失っていることです。この9月12日は、シリア内戦の停戦発効日で、ISISとアルカイダ系以外は戦闘を停止することになっているのですが、この件に関する報道は最低限のものしかありません。また、リビアの情勢も流動的になっているのですが、その報道もほとんどされていません。

 もちろんイラク戦争のように、アメリカが介入することで混沌と無秩序を作りだしたことを考えると、アメリカは関与すべきではないという考え方もあるかもしれません。ですが、どう考えても地域の現状に責任があるはずのアメリカで、このように中東への関心が薄れていることは大変な問題だと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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