コラム

保守派からも見放された「ブッシュ・ファミリー」の憂鬱

2015年11月10日(火)16時10分
保守派からも見放された「ブッシュ・ファミリー」の憂鬱

父と兄の影響を回避しようと、ジェブは選挙戦で「Bush」の名前を前面には出さなかった Joe Skipper-REUTERS

 共和党の大統領予備選は今週もテレビ討論があるのですが、その討論を前にしてジェブ・ブッシュ候補の勢いがかなり鈍ってきています。有力な政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」が集計した各種世論調査の平均値では、支持率が5位になっていますが、問題はその数字です。

 1位がトランプ候補で24.8%、2位はカーソン候補の24.4%と、トップの「政界の素人」2人がほぼ拮抗。これに3位のルビオ候補(11.8%)、4位のクルーズ候補(9.6%)が続いています。ジェブはその下で、現在の党内での支持率は6.0%と完全に低迷しています。

 全国平均だけでなく、年明け2月に予備選と党員集会のあるアイオワ州とニューハンプシャー州でも同様に「ヒト桁の5位」となっています。このままの数字であれば、かなりの確率で撤退に追い込まれる、そんな状況となってきました。

 ジェブがここまで苦戦するのは、もちろん「トランプ旋風+カーソン人気」をもたらした「既成の政治家への不信感」というトレンドが、もろに逆風になったということがあります。

 ですが、それ以上に足を引っ張ったのは「ブッシュ」という名前でした。そのためにジェブは、選挙運動のキャンペーン・ロゴとして「Bush」の4文字のない「Jeb!」という表現で押し通しているのです。ではジェブ候補は、どうして「Bush」の4文字を「隠さなくては」ならなかったのでしょうか?

 一つには、父と兄が大統領であったことで「ブッシュ・ダイナスティ(王朝)」になるという批判をおそれたことがあると思われます。ですが、これは隠してもどうしようもないことですし、場合によっては保守中道のグループには安心感や信頼感を与えるという効果もゼロではないでしょう。

 問題は「ブッシュ(父)」ではなく、「ジョージ(兄)」です。要するに9・11のテロを受けてアフガニスタン戦争、そしてイラク戦争へと自身の判断で2つの大きな戦争を起こした兄の存在が問題なのです。「Bush」の4文字を見ると、兄ジョージの8年間、そして2つの戦争に疲弊した時代のことを思い起こす人が多いからです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ツイッターで中国批判 為替・南シナ海め

ビジネス

戴シャープ社長、東証1部復帰後に退任の意向

ワールド

伊首相の辞意表明、引き続き政治動向を注視=菅官房長

ワールド

1回の会談で解決できるような問題ではない=日ロ交渉

MAGAZINE

特集:トランプ時代の国際情勢

2016-12・ 6号(11/29発売)

トランプ次期米大統領が導く「新秩序」は世界を新たな繁栄に導くのか、混乱に陥れるのか

人気ランキング

  • 1

    イギリス空軍、日本派遣の戦闘機を南シナ海へ 20年には空母も

  • 2

    内モンゴル自治区の民主化団体が東京で連帯組織を結成した理由

  • 3

    プーチン年次教書「世界の中心で影響力」を発揮する

  • 4

    タイ新国王が即位しても政情不安は解消されない

  • 5

    百田尚樹氏の発言は本当に「ヘイトスピーチ」なのか…

  • 6

    「3.9+5.1=9.0」が、どうして減点になるのか?

  • 7

    東京は泊まりやすい? 一番の不満は「値段」じゃな…

  • 8

    イタリア政府、憲法改正国民投票を12月4日実施 首相…

  • 9

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 10

    エディ・レッドメインは「力のある俳優」

  • 1

    「3.9+5.1=9.0」が、どうして減点になるのか?

  • 2

    内モンゴル自治区の民主化団体が東京で連帯組織を結成した理由

  • 3

    イギリス空軍、日本派遣の戦闘機を南シナ海へ 20年には空母も

  • 4

    スラバヤ沖海戦で沈没の連合軍軍艦が消えた 海底か…

  • 5

    悪名高き軍がミャンマーで復活

  • 6

    新卒採用で人生が決まる、日本は「希望格差」の国

  • 7

    バルト3国発、第3次大戦を画策するプーチン──その時…

  • 8

    偽ニュース問題、米大統領選は始まりに過ぎない?

  • 9

    東京は泊まりやすい? 一番の不満は「値段」じゃな…

  • 10

    イタリア政府、憲法改正国民投票を12月4日実施 首相…

  • 1

    トランプファミリーの異常な「セレブ」生活

  • 2

    68年ぶりの超特大スーパームーン、11月14日に:気になる大地震との関連性

  • 3

    「トランプ勝利」世界に広がる驚き、嘆き、叫び

  • 4

    注目は午前10時のフロリダ、米大統領選の結果は何時…

  • 5

    トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実

  • 6

    米大統領選、クリントンはまだ勝つ可能性がある──専…

  • 7

    トランプ勝利で日本はどうなる? 安保政策は発言通…

  • 8

    【敗戦の辞】トランプに完敗したメディアの「驕り」

  • 9

    安倍トランプ会談、トランプは本当に「信頼できる指…

  • 10

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「五輪に向けて…外国人の本音を聞く」
リクルート
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

『ハリー・ポッター』魔法と冒険の20年

絶賛発売中!