karins-shutterstock
私は2004年に日本料理の発展を目的とした「日本料理アカデミー」を設立し、翌年には海外の優秀なシェフを招致し日本の食文化を体験してもらう日本料理フェローシップをスタートさせました。
これまでにフェローシップに参加したメンバーにはデンマーク「noma(ノーマ)」のレネ・レゼピ、フランス「Mirazur(ミラズール)」のマウロ・コラグレコ、アメリカ「Single Thread」のカイル・コノートンなど、現在世界で活躍するトップシェフが多数来日しました。
なぜこのような活動を行っているかというと日本料理を世界の料理にしなければ、将来、日本の食は危ういと考えているからです。
現在日本の人口は約1億2500万人ですが、50年後にはおよそ8000万人に減少すると予想されています。労働人口は減少を続け、昔のような経済発展は見込めない状況です。
今日本の食料自給率はカロリーベースで38%しかなく、このままではさらに低下していくでしょう。将来、経済力が低下した日本で、今のように海外から食料を輸入することができるのでしょうか。
そう考えた時、今できることは食料自給率を上げること、そしてそのために日本料理を世界の料理にしていくことだと思いました。日本料理が世界で発展するということは、日本の食材が世界にでていくということです。
私は日本の食材は世界一美味しいと思っています。それが輸出されれば、世界中の人々を喜ばせるだけでなく、国内の生産者の収入を増やし、自給率の向上にも繋がるはずです。
子供や孫の代まで日本人が安心して食べていくために、日本料理を世界に広げなければならない。そんな思いもあり、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録にも奔走しました。登録に向けた活動は2010年、食に関する無形文化遺産としてフランスの美食術が登録されたことがきっかけでした。
フランス料理のトップシェフのアラン・デュカスに「フランスの他に登録できる可能性があるのは日本だ」と背中を押されて動き出し、国の省庁や有識者による検討会に加わりました。検討会で特に議論になったのは「何を登録するか」です。
実は同時期に韓国が宮中料理を登録しようと動いていたのですが、宮中料理店への利益誘導になる恐れがあると指摘され登録が見送られました。私達も当初は「日本料理」を検討していたのですが、韓国の結果を受けて再検討し、2013年12月「和食:日本人の伝統的な食文化」の登録が決まりました。
申請の際、和食の特徴として挙げたのは「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」「栄養バランスに優れた健康的な食生活」「自然の美しさや季節の移ろいの表現」「年中行事との密接な関わり」の4つです。
