コラム

「手を上げない消極的日本人」の正体とは?(パックン)

2023年04月22日(土)16時08分

子供の頃は積極的だったのに… recep-bg/iStock.

<日本人は消極的なので授業で手を上げない...のではなく教育に問題がある、とパックンが実体験から指摘。学力が先進国下位でも人材豊富なアメリカに見習うべき点とは?>

新学期の季節ですが、ぜひご自分の「小・中・高」時代の教育を少し思い出してください。そこで質問。幼稚園の頃はいつも手を上げていたのに、教育の過程で授業で手を上げなくなった人......はい、手を上げて!

全国各地の講演会で学校を訪れる機会が多い僕だが、数年前に日本の学生の特徴に気付いた。手を上げる度合いは年齢と反比例関係にあるのだ! 幼稚園生はとにかく話したい、参加したい。○○手伝ってくれる人? 〇〇やる人? 〇〇知っている人? なにを聞いても「はい!はい!はい!」とすぐに手が上がる。「知っている人?」と聞いているのに「はい!はい! 知らな~い!」と手を上げる子供も多いぐらいだ。

しかし、学校に通い出すと変わる。小・中・高で徐々に手が上がらなくなる傾向があり、知らないのに知っているふりして手を上げる幼稚園生から、知っているのに知らないふりして手を上げない生徒さんに変身してしまう。さらに残念なのは、本当はやりたいのに「やる!」と手を上げなくなくことだ。

質問機会よりお行儀のよさ?

僕はずっと前から、この教育のいやな帰結に気付いていたが、原因がわからなかった。そしてある日、自分の子供が通う公立小学校の公開日に授業参観をさせてもらった。授業が始まる前に気付いたが、教室の壁に子供の美術や書道の作品などと一緒に、独特なメッセージが書いてあるB4の紙が一枚貼ってある。そこには3つの単語のみが書いてあった。
 
 はい
(立つ)
 です

ナニコレ? と不思議に思ったが、授業が始まって5分以内に謎は解けた。

先生が「『三原色』を知っている人?」と聞くと、(父と一緒で幼稚園生精神がずっと残っている)わが子が「はい!」と手を上げた。先生に「ハーラン君どうぞ」と指されると、息子が立つ。そして、椅子の後ろに回り、椅子を机の下に直ししてから「赤・黄色・青です」と答える。そして、また椅子を引いて、回って、座り直した。

これが「はい/(立つ)/です」なのだ!

なるほど。とてもいい学校だし、先生方には常に感謝している。参観日に見た、お行儀よく先生の話を聞いている生徒さんたちの態度もすごいと思った。しかし、聞きたいこと、言いたいことがあっても、「はい/(立つ)/です制度」のめんどくささを考えたら手をあげたくなくなるだろうね。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story