コラム

【初歩解説】結局、トランプの狙いは?子供にも分かる「関税・貿易」の基本から見えてくること

2025年04月17日(木)10時55分
ドナルド・トランプ、関税、貿易、貿易赤字、ホワイトハウス、パックン、パトリック・ハーラン

USA TODAY NETWORK/Reuters

<トランプは無知なのかウソつきなのか?ニュースを読み解くため押さえるべき貿易の仕組みを、ハーバード大卒芸人のパックンが「親子対話」で解説します>

トランプ米大統領が「解放の日」と称した「相互関税」の発表についてニュースで見た子供に、大事なことを聞かれた。

子供:ダディー、なんで日本が46%もの関税をアメリカに課しているの?

僕:うーん。本当はそんなにかけていないんだよ。だってリーバイスのジーンズもiPhoneも、アメリカで買うより日本で買った方が安いじゃないか。


子供:うん。でもそれらは中国で作られているよね?

僕:あっ!そうだった。じゃあ飛行機、光学機器、液化天然ガスはどう?

子供:買ったことないよ!

僕:そうか。まあ、とにかく日本はアメリカからいろいろなものを輸入しているが、ほとんどは関税かけていない。全体的に5%未満で、アメリカが課している関税とほとんど変わらない。

関税と貿易赤字は違う

子供:そうなの?じゃあ、なんでトランプさんは46%って言っていたの?

僕:それは、トランプさんが貿易の基本を分かっていないか、ウソをついて国民をだまそうとしているかのどっちかでしょう。どっちがいい?

子供:どっちもいやだ。

僕:46%とはアメリカの日本に対するの貿易赤字の数字。そういえば、君は関税と貿易赤字の違いを分かっているかな?

子供:分からない。

僕:じゃあ、君と大統領のために、簡単に説明するね。まず、世界を村に例えよう。村に農家もいれば、靴屋さん、洋服屋さん、鍛冶屋さん、大工さんなどがいる。みんながそれぞれ、得意な仕事をしてお金を稼いで、ほかの人の商品を買って仲良く暮らしている。これが「貿易」のシステム。例えば家具が欲しい農家の人も、ノウハウがないのに無理やり作るより、お米を売って大工さんから家具を買った方がいいよね?

子供:そうね。ダディーが日曜大工で作ったテーブルはすごいガタつくしね。

僕:やかましい。とにかく、各自に向き不向きがあっても、貿易のおかげでみんながより豊かな生活ができるわけ。貿易赤字というのは、相手に売ったものより、相手から買ったものの総額が高い状態。例えば、僕らハーラン家はスーパーの「〇正」で毎日買い物しているが、そのスーパーの人は僕のお笑いライブに全然来ないだろう?

子供:そもそも誰も来ないよ。

僕:お小遣い減らすぞ。つまり、僕はお金もらっていないから、そのスーパーに対して大きな貿易赤字になっている。スーパーから見れば黒字だ。同じように、アメリカは日本に売るもの(輸出)より、日本から買うもの(輸入)が多いので貿易赤字だ。その赤字の額をアメリカへの輸入総額で割ると、トランプさんが言っていた46%になる。関税ではなく、貿易赤字の率なんだ。わかったね?

子供:ふーん。じゃあ、関税は?

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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