コラム

【初歩解説】結局、トランプの狙いは?子供にも分かる「関税・貿易」の基本から見えてくること

2025年04月17日(木)10時55分

僕:関税は、他国から買うもの(輸入)に対する税金。貿易赤字を是正しようと、トランプは日本の車などに24%の税金をかけると言っているわけ。例えるなら、「○正」で100円のジュースを買うとき、100円のほかにさらに24円を払わないといけないってこと。


子供:誰が?

僕:ジュースを買った君が。

子供:誰に?

僕:ハーラン家の政府。つまり、僕に。

子供:バカか!

僕:それが関税だよ。それで、ハーラン家のジュース産業を守る!

子供:ないよ。

僕:うん、ないね。もちろん、無理やりジュースを作ってもいいけど、効率が悪い。芸人の方が向いている。

子供:面白くないのに?

僕:クリスマスをキャンセルするぞ。要は、貿易赤字が悪だとトランプさんが思っているようだが、それは勘違い。貿易相手にお金を盗まれているわけではない。その分、ほしいものが手に入っている、Win-Winな関係だ。

子供:でも、あのリストを見るとほとんどの国に対して赤字じゃない?大丈夫?

僕:(池上彰さん風に)いい質問ですねぇ。たしかに、僕はスーパーからお金をもらっていなくても、テレビの仕事とかでもらっているからハーラン家の家計が成り立つよね。だから普通に考えると、国も全体的に貿易の黒字と赤字でトントンにならないとまずいはず。

子ども:でしょ?

貿易赤字「是正」のためのとんでもない代価

僕:なんでアメリカは赤字だらけでもやっていけるかというと、ほかの国は米ドルがほしいとか、アメリカの国債がほしいとか、アメリカの企業の株や社債が欲しいとか......アメリカの「もの」を買わなくても、為替、投資や借金という形でお金をくれるからだ。これは「国際収支」の話になるんだけどね。

子供:人からもらったお金で買い物しているの?僕らハーラン家もやろうよ!

僕:うん、やりたいね。でも、そんなことをさせてもらえるのはアメリカぐらいだ。ドルが世界の基軸通貨だし、先進国の中でアメリカの経済が断然元気で、政府の信頼性が高いからできる。基本、誰もマネできない特権だ。

子供:トランプ関税のせいで経済が失速し政府が信頼失ったらどうなる?

僕:海外からの融資や投資は止まるかもね。フランスのマクロン大統領は既に止めようと言っているよ。

子供:そうなったら、貿易は?

僕:まあ、アメリカの経済も、株式市場も、国民の生活水準も暴落し、とんでもない大損を食らうけど、原理として貿易赤字は是正されるはず。

子供:それが狙いじゃない?トランプさん、天才だね!

僕:NOOOOOOO!!!!

少しは脚色しているが、だいたいこんな風に話をしたのだった。教訓は解放の日がアメリカ崩壊の日を招く可能性は十分あるということ。先にトランプさんにも質問されたかったね。

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プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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